コンティニューはいたしますか

知ってるようで知ってない事がある現実は、頭の中で理解していても、感情を隠すのは元々下手くそで。例えそれが些細なことでも、気持ちの中でもやっとしてしまう子どもみたいな考えは自分でもわかっている。思い返せば、思い当たる点はいくつかあったのに、それに気付いてすらいなかった。利き手の話を知ったのも、自分からでなく至と紬さんとの会話から。
「何ふてくされてんの」
「…何でもない」
隣に腰掛けた至の右手にあるグローブ。私のグローブは左手。ずっと、ずっと、好きで、一番近くで見ていたのに。そんな違いにも分からなかった。着飾られていない至の空いた左手に両手を添え、ぎゅうと力強く握りしめた。悔しくて情けなくて、じわりと目頭が熱くなる。その行為を不審に思ったのか、顔を覗き込んできた至と目線を合わないようにと逸らし続ける。こんな子供じみた嫉妬心、恥ずかしくてどうしようもない。どうしようもないのに、ぽんぽんと頭に添えられた手の優しさに、零れ落ちてしまった涙に気付かれないよう、縋るように体を寄せ、その胸に顔を埋めた。
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