わたしのほかはきみだけ

恵まれた容姿に相応しい頭脳。普段は無機質なものばかりに触れる手が、液晶に集中する視線が。何一つと言ってあげるような取り柄もない自分自身に向けられている現状は、改めて不思議である。まるで他人事のようにさえ感じてしまう程に、私と至には年齢だけではない大きな差がある事は重々理解している。卑下する訳ではないのだけど、まだ自信がないのだ。それでも、求められていると自惚れてしまっても仕方ない程に、頬に触れてくる掌は熱を帯びて暖かい。同じ様に人生の半分以上をゲームに注ぎ込んでいるこの人にも、三次元の人への興味があるのだと。それは、私だけが知る感覚だけではないのかも知れないけど。
頬に添えられた掌に縋る様に身をよじると、ギィとソファーが音を立てる。首筋をするすると滑る様に指先が伝う感覚には、どうしてもくすぐったさが優先してしまう。こういうところで色気が無いんだろうな。仕方ない、こっちはまだ子供なんだもの。
天井に向かって伸ばした両腕は至の首を捉え、そのまま胸元に押しつける様に引き寄せる。ふわふわとした至の髪が肌に触れる。跳ねるように音を立てる鼓動が聞こえてしまうかもしれないけど、今は何となくその頭を撫でたかったのだ。
何か言われるのかと思ったけど、珍しく至は口を閉ざしたまま、されるがままを受け入れていた。撫でる手を一度止めると、伏せられていた至の瞳がこちらを射抜く。
そんな顔、するんだ。
途端、胸の中に広がる暖かな気持ちが妙に至を恋しく思い、思わず口元に笑みが浮かぶ。次の瞬間には、その笑みすら覆い隠すよう、降ってきた深い口付けに全てを持っていかれていた。
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