ひとみのなかの黄金へ

中庭で風に揺られ、気持ちよさそうに泳ぐ鯉のぼりに目を向ける。至のアイデアにより、オッドアイにされた鯉のぼりは流石に斬新であった。そもそも鯉のぼりを作ることも、拝むことも久しぶりだったわけだが、まさか各組対抗で鯉のぼり作りをする事になるとは…。
「うん、いいじゃんオッドアイ」
隣にやって来た至が、それはまぁ誇らしげに春組オッドアイ鯉のぼりを見上げる。作っている最中もいかんせ楽しそうな姿だった。魔法陣を自作していた時といい、意外とこういう創作が好きな一面を見れるのは、有難い事に本来の至を知っているからこそだと思う。
「厨二病鯉のぼりは想像してなかった」
「発想の勝利」
「そういうもの…?」
「鈴音も楽しんでたでしょ?」
春組に混ざらせて貰い行った作業は、紛れもなく子供心躍るというか。確かに、楽しかった事に違いはない。此処に居るからこそ出来る体験は沢山ある。
「そうだけど…」
「うん、楽しかったら何より」
にこりと笑い掛ける至は本当に絵になる。もう何度見たのかわからないこの笑顔。それなのに、その都度ドキドキさせられるものだからたまったものじゃない。
「また、一緒に作れたらいいね」
「そうだね、来年もこうやって鈴音といられたら」
嬉しいよ、と耳に届く声。
願わくば、それが来年だけじゃなくて、再来年もその先もこうして一緒にいられますように。と、柄でもなく恥ずかしい本心を鯉のぼりに捧げるのでありました。
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