(第二公演パロ)
強いて言えば、そこまで興味があった訳ではない。
初めは、空想が現実になったようなものだと思っていた。いや、空想とは言っていない。其処にいたが、見えていなかっただけの三月うさぎが見えるように、存在するようになった。髪より高い位置で動く、三月うさぎの名に相応しい耳を揺らしながら、空白の席に座った彼女は、何事も無かったかのようにクッキーに手を伸ばした。
不思議な事に、彼女とは初対面と思えなかった。あちらも同じ様に思っているだろう。だから躊躇無く言葉が零れ出る。
「いらっしゃい三月うさぎ、紅茶も飲むかい?」
「砂糖いっぱい入れて」
否定しない返事。直感は正しかった様で、一つの疑問も無く目の前の彼女が三月うさぎである事が確定した。リクエスト通り、カップに注いだ紅茶に角砂糖を数個落とす。成る程甘いのが好み、と。いや、知っていた事だったかな。
机越しに差し出すのも如何なものか、立ち上がり彼女の元へ足を運び、目の前にカップを置く。カチャリ、と音が響く。此方を見上げる彼女と視線が交わった。
「帽子屋」
「ん、なんだい?」
「貴方はずっと此処に?」
「そうだよ」
ふうん、と一言。まだ問いたそうな表情を浮かべていたが、その口は開く事無く紅茶を満たした。彼女が何を言いたかったのか、多少気になるところではあるが、気に留めず席へと戻る。明日もこうして会える事に違いは無いのだから。