純色ドリーマー

練習も終わり、ジャージを脱ぎ捨てて干物モードへとチェンジした至を横目で見る。普段とは違う違和感に思わず首を傾げる。
「それ」
「あぁ、これ?」
普段は綺麗に分けられている前髪が一つに束ねられている部分、ぴょんと立つ前髪からの違和感は結われているゴムの色が違うからだった。
「いつもの無くしちゃってね、借りのやつ」
「だからピンクなんだ…」
確かに至はピンクが無駄に似合うとは言え、髪に身に付けるとより一層目立つ気はする。本人は対して気にしている様子はないし、結う事が出来ればそれでいいのだろうけど。眺めていると、不思議と湧き上がる好奇心。個人的に別のヘアゴムを付けているところを見たい、と思ってしまう子どもみたいな遊び心。
「結ってもいい?」
片方のヘアゴムに手を掛け、そのまま髪を解く。星型のヘアゴムを見せると、コントローラーを握った至は一瞬間抜けな顔を見せたかと思うと、そのまま含み笑いをする。
「それで結いたいの?」
「うん」
普段もこれだけ素直な受け答えが出来ればいいのに、と我ながら思う。それは至もきっと感じ取っているみたいで、ピンク色のヘアゴムに手を掛け髪を解く。
「いいよ、鈴音の素直な我儘なんて珍しいし」
解かれた髪がさらりと瞳に掛かる、その下で鈴音に向けられた笑顔は優しいものだった。こうやって、甘やかしてくれるところが本当にズルい、と分かってはいる。それだから偶には我儘を言っても許されるのかもしれない。至との距離感をぐっとつめ、星型のヘアゴムを片手に、そっと柔らかな前髪に手を触れた。
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