この指先はいつもきみを想ってる

コントローラーに伸ばした右手は目的の物を掴まず、逆にその手を取られる。視線を上げると、手を掴んだ至の視線が鈴音の手に注がれる。
「…至?」
「ん、ちょっと」
ちょっと、とは一体。そのまま続きの言葉はなく、至の両手に包まれるように握られている鈴音の手は、身動きが取れないままその行方を追うしかない。
時々、突拍子もないような思いがけない行為をする事がある。まさに今置かれている現状がそれなのだが。何考えているんだろう。表情を見ても何一つ読めないままでいたその時、至の細い指先が掌を、甲を、挟むように押す。何故かわからないが、ふにふにと手を触られている。
「え、どうしたの?」
問い掛けにも答えはなく、その行為のみが続く。それもあって、鈴音の頭の中は相当混乱していた。読めない至の意図に相反して、右手に与えられる感触がむず痒く、背筋がぞわぞわする。どこにそんな力があるのかと言いたくなる程、力強く握られているせいか振り払うことも出来ない。
「まっ…い、至!」
必死に声を荒げて名前を呼ぶ。満足しきったのか、ようやっとその行為は止められた。解放された右手はぴりぴりと痺れている。与え続けられた刺激に、掌の感覚がおかしくなったような気さえする。
「鈴音、いい顔してるけど?」
「誰の所為だと…!」
お小言を言う元気すら持っていかれてしまった口からは溜息しか出なかった。可愛かったから、ごめんね。と心底嬉しそうに笑う至から渡された本命のコントローラー。その笑顔だけで許してしまいそうになる自分も自分である。やられっぱなしは悔しいので、せめてもの仕返しに至の腰を小突くが、それも対した反撃にはならなかった。
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