幼い光

新しい春組公演の内容を聞いた時には心底驚いた。至が再び主演なのだ、しかも公演内容は至が思い入れのあるゲームときた。練習のサポートぐらいしか出来ない身として、改めて役者としての至の立ち位置を実感させられる。
ノックしてお邪魔する103号室。出迎えてくれた城の主に第一声のおめでとう。少し驚いたような表情を浮かべた後、いつものように笑顔を浮かべたので特にこれといった違和感は感じていなかった、のだが。そのまま手を引かれ指定席となっているソファーに座らされると思いきや、腰を下ろした先は先に座った至の膝上。時々、このように膝上に座らされ、そのままゲームに集中する至の抱き枕の様な状態に鈴音がなる事はあるのだが、そう言う時はいかんせ何かある時。
変に聞かない方が良いかも、そう思いながら机の上に置かれたコントローラーに手を伸ばそうとしたところ、伸ばした鈴音の右手に重なる様に置かれる至の大きな手。引き戻されたと思うと、次は腰元へしっかりと回される両腕。ぴたり、と接着するように寄り掛かかる至との距離感はないに等しく、背中から伝わる熱を感じる。どうやらゲームをする訳ではなさそう、という事は理解出来る。
「あー…落ち着く」
肩口に顔を埋められているせいか、至が話す言葉が直接体に響く様で妙に擽ったい。
「もしかして、緊張してる?」
「どうだろうね」
返答からは、あくまで誤魔化そうとするスタイルを突き通す模様。まぁ、聞かれたくない事もあるだろう。言葉ではなくとも、珍しく甘える様に触れ合う形で至が接してくれているのだから、その態度には応じよう。回された腕に手を重ねると、抱き締められる力が強まり少し苦しいが、今は至の思うようにされておこう。甘えられる事は、決して嫌ではないのだから。
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