言う葉は異なれど

どうしても至に用事があり、学校帰りに足を運ぶビジネス街。待ち時間をゲーセンで過ごそうかと思ったものの遊びきってしまった。先輩である万里の姿があれば、まだ此処で時間を潰せたかと思うがそうはいかず、時間はまだある。ゲーセンを出た足で適当にぶらつくが、幸い飲食店は豊富に揃っているので、雰囲気が良さそうと思うカフェを選ぶ。
運ばれてくるコーヒーに角砂糖を入れ、冷めるまでソシャゲの画面を開く。陽も沈みかけた為、窓ガラスの向こうに見える高層ビルに光が灯り始める。至は、まだ仕事に追われているのだろうか。LIMEには既読の表記はあるが、返信は無い。場所は知らせているので多分大丈夫だろう。そう思いながら、程よく冷めてきたカップを手に取る。

ソシャゲをしながら待つこと数十分、扉が開く心地よいベルの音が聞こえたかと思うと、目の前にはスーツ姿の待ち人が姿を現した。
「探したんだけど」
「え、場所言ってたでしょ?」
何やら至の表情は切羽詰まるような、穏やかなものではなかった。その意味がよく分からず、首を傾げた鈴音に至は大きな溜息をついた。
「あのさ…、待ってくれるのは嬉しいけど、一人で待たれると俺も心配っていうか…お陰で仕事も早く切り上げられたけどさ」
心配させてしまったのだ。至の会社で待たせてもらうのもどうかと思った結果、そう思わせてしまうとは思ってもいなかった。
「急だったから…、ごめん」
「いいよ、何もなくて安心した」
前の席に腰を下ろした至が注文を取る。その姿を見ながら、思い返される先程の言葉。申し訳なさを感じながらも、どこか大切にされている喜びを実感する。浮かぶ笑みを隠しきれずにいると、机越しにデコピンが飛んできた。
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