この夜がすべて魔法だったとして

どうしてこうも狂わされるのか、
仕草、言葉、表情。何一つとっても至自身に向けられている姿に、ぐらぐらと理性が揺れる。ソファーに釘付けられる様に、絡め合った手はキツく力が込められる。きっと痛いのであろう、その感情が伝わってくる。
むり、と整わぬ息で訴えかけてくるその唇に軽く触れる。頬に、耳に、唇に、何度もキスを繰り返す内に、痛い程握り締められていた手の力が少し緩む。隙を見て、腰を深く落とすと、悲鳴にも近いような甘美な声。慌てて声を噛み殺すように固く閉じた唇に触れ、無理矢理ねじ込む様に舌を絡める。逃げ場を無くした舌先を捉えると響き合う水音が、つけたままになっているゲームのBGMと混じり合う。

もう、人と深く関わり合うなんて思ってもいなかった。誰かを愛しく想う感情も、溺れる様な快楽も、知ってしまえば後戻りは出来ない。身体も心も鈴音じゃないと満たされなくなってしまう。
つう、と間を繋ぐ唾液から視界を上げる。高揚した頬、瞳に涙をいっぱいに溜めた鈴音の表情にごくりと息を飲む。優しくしたいというものの、冷静さは少しずつ削り落とされていく。
「鈴音、」
触れ合うところ全てが燃える様に熱い、このままずっと触れていても良いだろうか。それぐらいの我儘は許してもらえるのだろうか。
ALICE+