同じ夜を並べて眠れ

慣れない事はするものじゃないとつくづく思う。少し上に視線を向けると至の表情を捉えてしまう瞳は、行き場を失ったままでいる。真正面から見るなんて、恥ずかしい事この上ない。いっそもうスマホでも触ってくれればいいのに。心の中ではそう願うものの、ソシャゲの通知が来ても見向きをせずにこちらに視線を送り続ける至と二人、向かい合う形でベッドに寝転んだまま刻々と時間だけが過ぎていく。
「いい加減慣れない?」
「っ、慣れないから!」
当の本人も顔が良いことは理解しているが、それ以上鈴音に与えるダメージは大きい。例え中身が干物オタクであれど、格好いい事には変わらない。視線を泳がせ続けていると、突如後頭部と腰に添えられた手によって、至との距離が零になる。視界いっぱいに広がる白いシャツ、確かにこれなら至の顔を見る事はないが、それ以上に触れ合う所から伝わる体温が、じわりじわりと温もりを共有していく。触れられたところ全てが熱い。跳ねるように音を立てる心臓が煩く、至にも聞こえてるんじゃないかと。
「このままでいるからね」
優しい手付きで頭を撫でられる。踏むべき段階がまだまだあるそうだが、これ以上の事になってくると正直耐え切れる気がしない。どうやって保てばいいのか、熱にやられてくらくらする思考ではまともな考えなんて一つも浮かばなかった。
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