ハニー・ミルクコーヒー

推しキャラガチャ告知が来たのが遡る事数十分前。日付を超えてから開始される限定ガチャ、10連にも届かない心許ない石の数に単発でどうにかするべきか、と肩を落としていたところ、通知を見た至からの一言。
「カード買いに行く?」
その問いかけに頷きと共に即返事をし、無事にコンビニでカードを手に入れることが出来て今に至る。財布の中は少し薄くなったけど、それでも課金用の石が確保でき、ガチャに備えられると思うと喜ばしい。至もカードを買っていたところ回すのかな、とぼんやり思いながら隣を歩く至にちらりと視線を送る。
冬空の中、街灯の光に照らされた至の整った横顔、コーヒーを飲む仕草すら絵になるなんて。こうして外で至と歩いていると、私達はどう見えるのだろうかと考えてしまう。別に、兄妹に見られようが、恋人に見られようが、視線を引き寄せるのは至だということは重々に理解している。それだけ魅力的な人なのだ、茅ヶ崎至という存在は。それでも、隣にいる私だけが外面だけじゃない、至の内面を知っている事には胸を張って主張してもいいと思う。だって、私は至の恋人なんだから。

こんな事考えてしまうなんて、寒さで思考がどうにかなってしまってるのかもしれない、一人で納得してしまった事が妙に恥ずかしくなって、空いてる右手を至のコートのポケットに入れる。私より少し体温の高い暖かな手が触れ、指を絡めるように握りしめた。途端、至の視線がこちらを捉える。少し驚いたような表情をしたかと思うと、直ぐに優しく笑い掛けるのだ。
「イベガチャ何連回す?」
「出るまで回す」
「それでこそ鈴音。石無くなったらまたカード買いに行こっか」
「それはいいけど、爆死しない事を願ってよ!」
「確かに」
本当に狡い、そうやって、何も触れてこない事も、まるで私の思考を全て読まれてるみたいで。
ポケットから引っ張り出された手はお互い繋いだまま、離さずに。寒さなんて、飛んで行ってしまいそう。
ALICE+