それから世界が眠るまで

ベッドの何処からか聞こえてきた軽快な通知音と共に、声を上げて体を起こした至が慌ただしくスマホに手を伸ばす。何も身に纏っていない至の曝け出された上半身が先程までの行為を思い出させる。相変わらず自慢の腰は細い。ちらりと見えた背中には、引っ掻かれたものをはじめとする生々しい爪痕がありありと残されている。血も滲んでいる。きっと、お風呂で染みるだろうに、そう思いながらもまだ行為自体に慣れきっていない体の節々に痛みを感じるのでお互い様ということにしておきたい。
体力あぶれてるかな、消化しなきゃ。そう思いながら乱雑に投げ出された衣服の中からスマホを探そうとするが、先に手が捕まえたのは至のシャツ。よりによって会社に着ていく物だ。皺になるのに、と思う反面、アイロン当てたらいいかとまだ熱に浮かされている思考で結論づける。体を起こし、そのまま羽織るようにシャツに手を通すと、余る袖口を少し捲る。散々至の熱を感じた所為か、包まれてるような不思議な気分。まだ下腹部がどくどくと熱いような気さえするのを誤魔化すように、再び衣服の山の中に手を伸ばし、本命のスマホを手に取る。もう一度、体を横たえてアプリを起動する。案の定、ソシャゲの体力はゲージ満タンで溢れきっていた。
「至の所為で体力あぶれてた」
少し口を尖らせて、意地悪く言う。照れ隠しだときっとバレてるだろうけど。はいはい、とわかっているのか、こちらに見向きもせずに頭に置かれた手が、慣れたように髪を撫でる。この手はどこまで私を翻弄してくるのだろうか。好きになってしまったのは私だから、文句の一つも言えないんだけど。
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