しっかりめに朝食は作るタイプ、と言うのは重々知っている事実だったが、机の上にズラリと並べられた数々の料理を目の前に、思わず笑いが溢れる。作り終えた降谷本人も、それは自覚しているようで眉を寄せて困ったような笑顔を浮かべていた。
「今日は増して豪華だね?」
「新しい手法を試していたらつい…」
エプロンを外し、席に着こうとする降谷を前に、遅れて着席する。朝食のボリュームとは思えない品々からは、程よく食欲を誘い掛ける良い香りが漂う。思わず頬が緩んでしまうのは仕方がない。しっかりと睡眠をとった体は、料理を欲しているのだ。
手を合わせ挨拶を交わし、真っ先に手を伸ばすのは彼が安室の名でバイトをしているポアロでも名物のハムサンド。亜樹も勿論そのハムサンドの魅力に取り憑かれた一人だ。一口、口に含むと広がる隠し味。
この瞬間、じんわりと満たされる心と食欲。料理人が降谷だから、というのも相乗効果。本当に、どうしたらこんなに美味しいご飯が作れるのだろうと、つくづく思う。
なんて幸せそうな笑顔を浮かべている琴を前に、作った張本人も思わず笑みが溢れる。
「零くんの料理が食べれるなんて、贅沢だなぁ」
「僕としては、亜樹の料理の方が好きだけど。まぁ、好んで食べてもらえる程嬉しい事はないか」
そう会話を交わしながら過ごす朝のひと時は、普段の喧騒など想像も出来ないぐらい平和で、穏やかな一日の始まりに過ぎなかった。