君が儘に

腕捲りをした安室の腕に、まだ真新しい傷痕がある事に気が付いた亜樹は、思わずその傷痕に目線が移る。よく怪我をしている人だと思う。といっても然程大きなものではないとはいえ、本人すら気付いていない傷痕も多々あるようだ。
「安室さん、腕に切り傷あるよ?」
「え?あぁ、こんなところに…」
今回も気が付いていない怪我の一部だった模様。かくいう亜樹も部活の度に軽い怪我を負う事があるので、絆創膏は必需品だった。エプロンを身に付けた後、がさごそと鞄の中を漁る。手に取った箱の中から一枚取り出した絆創膏。
「はい!ええのあるよー」
ずずいっと絆創膏を差し向けると少し困った様な笑みを安室は浮かべた。
「これぐらい大丈夫ですよ、よくある事ですから」
遠慮がちに断りを申し出てきた安室の返答に口を尖らす。どんな些細な傷であれ、安室の体に傷跡が残るのは何処と無く釈然としなかった。勿体無い、思わず口から出た言葉。
「では亜樹ちゃん、貼ってくれますか?」
「ええの!?」
差し出された右腕にパァ、と効果音がつきそうなほど、亜樹の笑顔が輝いた。意気揚々に絆創膏貼りに取り掛かる素直この上ない姿と態度に、安室も浮かぶ笑みは堪えられなかった。
ALICE+