この浮かれきった日に

(学生時代)

様々な媒体を通じて知り得た知識や情報やらが頭を巡るのはいつもの事。それを脳内だけで処理するだけには物足らず、声として発する事でより一層深まるのは間違いはない。元々喋るのは好きな方だ、話題が尽きない限り喋り通せる自信はある。残念ながら、それを共有出来る人が少ない訳だが。
亜樹はその一人である。前後の座席であるのを利用して、降谷自身がくるりと後ろに椅子を向けるとその場は形成される。降谷が喋り出すとスタートだ。話し相手の亜樹はというと、例えニュースであれ、他愛の無い話題であれ、嫌な顔一つとせず、長い髪を揺らしながら相槌を打ち、時々疑問をぶつけてくる。聞き上手、とはまさに亜樹を指すのかもしれない。それが何よりも、降谷にとっては心底居心地のいいものであった。

いつもの様に、口を閉ざす事なく暫く喋り続けていると、合間に亜樹がくすり、と笑う。
「何か変だったか?」
思わず、問い掛けてしまう。気に触るような事を言ってしまっただろうか、しかし反応は笑顔だったが…。答えを待つと、亜樹はふわりと笑顔を向ける。
「零くん、本当楽しそうに喋るなぁって」
だから聞いてて楽しいの。
そう付け加えての返答に、思わず降谷は息を飲む。まさに不意打ちだ。ほぼ一方的に話していたと思っていたものが、聞いていて楽しいと思われているなんて想像もしていなかった。もしかしなくとも、これは嬉しい事この上ない出来事ではないのか。
真っ直ぐに笑顔を向けてくる亜樹を直視出来ず、視線は空を過ぎるばかりだった。
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