甘美なるいいわけを

安室と共に買い出しを頼まれた最中、ふと梓が話題にしていた事が亜樹の脳裏を過る。JK、要するに女子高校生からの炎上案件だ。確かに、ポアロに来る女子高校生の一部は安室に対して少なからずとも熱い視線を送っているのは目に見えてわかる。カートを押しながら、手際良く材料を籠に入れて行く動作さえ、例え日常の一部だとしても綺麗に映る。それだけ安室透という男が魅力的であるのかは、同じ様にバイトを共にしている亜樹も十分理解している事実だ。
それでも、いかんせ負に落ちない。
確かに、梓は亜樹から見てもポアロの看板娘でもあり、明るく魅力的な大人のお姉さんだ。それでいて安室と並ぶと相乗効果も合わさって絵になるのは間違いなく、恋人同士に見えても仕方がない。かく言う亜樹自身も、今こうして安室の隣に立ち買い物をしているわけだが、今まで一度たりとも炎上がどうだ、言いよっているだけどうだ、その手の話題が起きた事は無かった。なければいい方がいい、という事は当たり前だとわかっている。こちとら女子高校生、好きな人と一緒にいる身として乙女心は複雑なのだ。
「…もしかして妹みたいなんかなぁ」
「何がですか?」
突如出した話に安室は疑問を浮かべる。小麦粉を片手に持つ姿すら様になるこの人は、自分がモテるという自覚はあるのだろうか。
「独り言!あ、安室さん。それ探してたやつ」
「あ、本当ですね」
深く聞いてしまうと、自ら墓穴を掘る可能性すらある。例え釣り合っていなくとも、今こうして隣にいられる立場に感謝しておこう。どうせなら腕ぐらい組んでも許されるかもしれない、そう思いながら空いている安室の腕にそっと自分の腕を回した。
ALICE+