かえりみちの救済者

学校からの帰路、傘を打ち付ける雨脚は少し弱まった。今日はポアロのバイト予定もなく、気分的に遠回りして帰ろうかと思い、通学路とは別の方向へ足を運ぶ。目的もなく、雨の中を散歩というのもなかなかに気持ちがいい。くるりと傘を回した亜樹は、水溜りを避けながら土手を歩く。
雨の日だからだろうか、人通りは殆ど無いのをいい事に、ど真ん中を歩いてた亜樹はふと、前から近づいてくる人影に気付き視線を向ける。どうやらこの雨の中にも変わらずランニング中の模様。避けないと、そう思い道沿いに足を置く。斜めになった傘からぽたぽたと雫が落ちる先、少しずつ近付いていく距離の中、その人物を瞳が捉えた。
「あれ、安室さん?」
フードから覗く顔は見間違える筈もない、確かに安室自身だった。声を掛けられた安室も思わず足を止める。
「亜樹ちゃん?」
「やっぱり安室さん!こんな所で会うなんて!」
まさかの出会いに喜ぶ中、普段あまり見慣れない格好の安室に興味をそそられる。ランニング中だったのといい、運動か何かだろうか?そういえば、テニスが得意だと聞いたとこがある。
「亜樹ちゃんは学校帰りですか?」
「うん。ちょっと遠回りしてたら此処に来て」
「奇遇ですね。僕もこの辺りを走りこんでいたのですよ」
そろそろ切り上げようと思っていたのですが、と付け足す安室の発言に亜樹は声を上げ、濡れるのも御構い無しに傘を差し出す。
「せやったら、一緒に帰りませんか?」
差し出された傘を受け取った安室はフードを脱ぎ、亜樹の隣に立つ。さらりと流れる金髪が揺れる。
「喜んで」
にこり、と笑顔を見せる安室に亜樹もつられて笑い返す。一人の時より狭く、高くなった傘の中。濡れないように、と亜樹の方へ大目に傾けられていることに気付く。安室さんが風邪引かないようにやから、と心の中で言い訳をしっかり言い聞かせ、ぴたりと寄り添うように肩を寄せた。
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