曖昧ミルクティー
「めーちゃん♪」寮室へ帰る途中、聞き馴染みのある声に名前を呼ばれる。そもそも、その名で呼ぶのは一人しかいない訳だが。
声に釣られて振り返ると、右手をひらひらと揺らす如何にも上機嫌ですという様子が伺える先輩。
「なんだ、けーくん先輩ですか。どうも」
挨拶はマナーとして大事なので礼儀正しく頭を下げる。声を掛けられたという事は何か用があるのか、それとも只の暇潰しなのか。正直何方でも代わりはしないけど。
「めーちゃん放課後時間ある?お茶しない?」
この手の誘いは何度か受けた事がある。甘い物には目が無い為に誘惑に負けた事は多々あるし、確かにオススメと言うだけ合ってそれはもう絶品の苺タルトの味は忘れられない訳だけど、今は違う。
「…甘い物食べたいんですけど」
「いいよいいよ!オレのオススメの店教えちゃう〜」
「はぁ」
先日、この人は甘い物が苦手だと知った。
だからこそ、わざわざ甘い物がある所に誘い掛けてくる意味が理解出来ない。無理して行かなくてもいいってのに。