隙だらけで好きまみれ

タイミング的には良かったのか、風呂から上がった時にチャイムが鳴った。時計を見れば八時半をさしていた、こんな時間に訪問者なんて珍しい。来るとしたら江ぐらいかと思いガラガラと扉を開けた。
「……何でいる」
「泊めてくれ」
まさかの幼馴染訪問、昔ならまだしも鮫柄に通う凛が遅くにやってくるとは予想外だった。というか少し離れているとはいえ家が隣なのだからいい加減実家に帰ればいいというもの。様子から察するにどうやら凛は居座る気満々らしい、寮はいいのか寮は。話に聞く噂の似鳥とかいう相方が寂しがるんじゃないか。

台所に向かう前に風呂に入ると凛は告げていった。お泊まりの代償に凛の手作り料理が久しぶりに食べれると思うと嬉しい事、これは楽しみだ。待ってる間する事も特に思い浮かばず畳の上に座り込みぼんやり、意識を凛に向ける。凛の突拍子もない行動の裏には何か言いたくない理由がある時にだから気になるが詮索はしないでおく。髪から滴り落ちる水滴がぽたりぽたり、太腿に当たる。うとうと、睡魔に思考が負け始める。
「…お、おい澪!」
「はっ!…寝てた」
「寝てた、じゃねぇよ!ったく…、髪乾かさずにいると風邪ひくだろ」
呼び声に反応して目を開けると風呂上がりの凛が目の前に立っていた。来た時とは違う黒のタンクトップを着ている辺りを見ると行き当たりばったりで泊まりにきたわけではなく着替えも持ってきたのか、計画性があるな…。そんな事を考えていると視界が白に変わる、バスタオルだ。
「乾かしてやるからそのまま座ってろ」
返答の有無も問わず、後ろに座った凛にがしがしと多少乱雑に髪を撫でられる、と言えば良いのだろうか。タオルの上からでもわかる手は大きくてがっしりとしていて。知らない内に凛は大きくなっているんだな、私はどうだろう。凛のように大きく変わる事が出来ているんだろうか。
背中を凛に預けると一瞬、凛の動きが止まる。
「……寝るなよ?」
「少しだけだ…」
寝てはいけない、そう頭では思ったが背中から伝わる凛の体温が暖かくてゆっくり目を閉じた。

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