目の前に現れた四年前姿をした幼い澪が俺に何かを告げるが波音に掻き消されて聞こえない。距離を詰めようと手を伸ばしみても掴むのは空ばかりで肝心の澪に触れる事が出来ない。壁はない、あるのは空白だ。埋めようにも埋められない時間が俺から澪を引き離す。俺が追い求めているのは誰だ?手の届かない幼い澪か、今の澪なのか。
重たい瞼をゆっくりと開くとすっかり日が落ちたのか雲一つない星空が窓の外を照らしていた。働かない思考と身体を起こすと隣には静かに寝息たてる澪がいた。そうだ、あの後濡れた制服のまま帰らせるわけにはいかない、澪の押しに負け家に連れられてきたんだ。着替えたのは良いものの澪も俺も気が付けば寝落ちてしまっていた模様、現状に至る。
髪も解かずにとは、澪らしくもない。そこまで気が張っていたのか、無理をしていたのは一目でわかる。全然大丈夫じゃない。
起こさないように赤髪に触れ、高くで結われた髪を解くと流れるように床に広がった。
スカートから覗く細い脚と油断しきった寝顔に思わず頭を抱えたくなる。無防備だ、いくら幼馴染とはいえ俺だって健全な男子高校生。記憶の中の幼い姿と食い違う現実の幼馴染のギャップに狂わされているというのに。それは澪も同じだからかもしれない、澪の中の俺もきっと幼い頃の俺のままで止まっているから無自覚で無防備なんだ、そう思いたい。
髪を掬うように頭をやんわりと撫でると赤髪が指に絡む。澪に触れている、それだけで愛おしい感情がふつふつと湧き上がる。いくら離れようが俺は澪が好きなんだ、幼馴染に囚われているのは俺自身。