無事に卒業も終え、部内の引き継ぎや引っ越し等々で忙しない春休みへと突入した。オーストラリアに旅立つ迄の数日間、久し振りに実家へ戻る事となる。時々帰省をし、澪の家へ顔を出したりしていたものの、ガッツリと滞在とはいかなかった分、不思議と新鮮味を感じる。
「という事で、迎えに来てやったぞ」
鮫柄学園の正門前にて、両手を腰に添え仁王立ちをしている幼馴染。何故なのか、余韻に浸る空気すら作らせて貰えない。
「わざわざ岩鳶から来たのかよ」
「そうだぞ?」
さも当たり前の様に答える澪に、これ以上突っ込みを入れるものではないと判断した凛は、大人しく隣に向かう。駅へ向かう視界の少し下、いつの間にか追い抜かしていた頭が嬉しそうに揺れる。
「こういうのも久しぶりだな」
ご機嫌そうな澪が此方を向く。確かに、幼馴染とはいえ思い返せば一緒に帰るなど小学校以来の思い出だ。オーストラリアに行く身として、これが最後になる事もきっと澪は理解しているんだろう。だから迎えに来た、突拍子にも見える行動の裏には必ずしも意味がある。分かるからこそ不思議と許してしまう訳で。今はただ旅立つ日まで、変わらない日々を一緒に過ごしていこう。