束の間の春休みの間、共に携帯から機種変更したスマホに澪は睨みを効かせる。元々遥と同じで、最低限しか携帯を使用していなかった澪にとっては、多機能に渡るスマホはいまいち理解が及ばないようだ。電話より直接対面して話す派の澪からは、連絡事項のみのメールが時々送られてきていたこの二年間ほどを思い返す。
しかし、こちとらオーストラリアに行く身としては、せめて初歩的な機能と、連絡が取り合えるトークアプリの使い方ぐらい今のうちに覚えていて欲しいもの。
「ここ、タッチして文字を打つ。わかるか?」
「…それはわかる」
「で、これが」
隣に座り、澪の画面に指を触れながら教える。その指先をじぃと見つめる視線、肩が触れるほどの近い距離、自室に居座る幼馴染。シチュエーションだけ見れば最高に整えられたものとは言え、悲しい事に意識されていない現状にはもう目を瞑るしかない。
「これはどうするんだ?」
液晶を覗き飲む澪の髪が揺れる。些細な仕草ですら、思わず一瞬息を呑む。それに気が付いたのか、澪の視線がこちらを捉える。
「どうした凛?」
「んでもねぇよ」
その意図は誤魔化しつつ、返答には動作で返す。疑問が解けた澪は、納得した返事とともに嬉しそうに笑みを浮かべていた。その笑顔が何より眩しくて、身近に拝めると言うことに少なからずとも喜びを感じていた。