「鮫は噛むのか?」
「は?」
話の脈絡からは想像もつかない幼馴染の話の切り出しに本心からの声が出た、何がどうしてそうなった。
「凛は鮫何だろう?」
「どう見ても俺が鮫なわけねぇよな??」
いや、確かに鮫はかっこいいし好きだ。だけどその結論にいくのはどう考えてもおかしいだろ。澪の唐突な話題性のぶっ飛びっぷりには慣れたような気もするが返し方に毎度の事ながらに頭を抱える。納得いかないのか口元に手を当てたまま俺の顔をまじまじと見てくる、例え嘘をついたとしても全てを見透かされてしまうようなこの真っ直ぐな目、この目が好きだ。
「…まぁ俺が鮫だとかの前提は置いといてだ、鮫ならどうなんだよ」
「凛も噛むのかと思ってだな」
噛む?それは誰をだ。言ってる張本人はよくわかってないようだがこれは俺が澪を噛むのか、と話題を振られてるでとったらいいんだよな、違っていてもそう受け取る。そうと勝手に決めつけたら仕方が無い、澪の両肩にしっかりと逃さないように手を置き少し上から澪を見る。白く無防備に曝け出された首筋に思わずごくり、喉がなる。
「…凛?」
疑問を浮かべた澪を気にする事なく首筋に顔を埋め、そのままがぶりと歯を立てた。
「いっ…!?」
まさか自分が噛みつかれるとは思ってもいなかったのか澪は小さく悲鳴をあげた。これは歯形くっきりに違いない、口の中にじわりじわりと鉄の味が広がるのを感じていたら突然後ろ髪を力任せに思い切り引っ張られる。
「いってぇ!!」
「それは私の台詞だ!!」
髪が抜けたらどうする!と反論したかったが顔を真っ赤に染めた澪の首筋に血の滲んだ歯形が一つ、これは…、独占欲が湧くというか…。
指で歯形を撫でると俺の手首を澪が取る、ヤベェ、相当怒ってる。
「お前の歯は痛い」
「噛まれたら誰だって痛いだろ」
「それなら何故噛んだ」
「澪が噛んで欲しいって」
「そんな事言ってない!」
怒りつつもちらちらとくっきりと目立つ位置につけられた歯形を気にする澪の様子を見てこれだと離れている時も俺を忘れずにいてくれるだろうか、何て思ってしまった俺は独占欲以前に女々しいような気さえする。