ちりん、ちりんと風鈴の音が響くのを聞きながら膝に視線を移す。胡座をかいた右膝の上で眠る幼馴染、枕が変わると寝れないとはよく言ったものだが昔から澪は俺の膝上で昼寝をする習慣がある。男の膝枕なんて硬いし気持ちいいものか、大半の答えはNOだろうけどどうやら澪は違うらしい。ここは私の特等席だからな、幼い頃の彼女は俺にそう告げた。
すーすーと規則正しく寝息をたてながら眠る姿から見て当分起きる事はないだろう。確信と少しの好奇心で寝顔を覗き込む、目元にかかる前髪を払うと伏せられた瞳と長い睫毛。
「…黙ってれば可愛いのにな」
可愛らしい外見から出る口調とのギャップにはもう慣れた。昔はもう少し口調にも可愛げがあった気がするような、いつから澪は変わってしまったんだろう。
くしゃり、と髪を撫でる。この時間が二人だけの時間が好きだ。起きている本人を目の前にすると無性に照れ臭くなってしまうのが難点だが、居心地のよさは変わらない。
「澪」
返事はない、今なら言える。好きだと、そう息を飲んだ。
「……んむ、凛…?」
寝返りをうった彼女とバッチリ視線があってしまい心臓が飛び跳ねた。
「おっ…、起きたのか?」
「…まだ眠い、寝る」
まさに寝起き、いや寝呆けてるのかもしれない。身動ぎ俺の膝に顔を埋める澪を見てやっと一呼吸つくことが出来た。危なかった、もう少しでもタイミングがずれていたら聞かれるところだった。…聞かせるべき相手は本人だが。
まぁ、でももう少しはいいか。澪にとっての特等席が俺であることに変わりはないのだから。