文句なし幸せごっこ

机越しに目の前で呑気そうにプリンをつつく度に感嘆の声を上げ喜びに浸る笑みを浮かべる幼馴染の様子をただ観察する、別に深い意味はない。送り続けていた視線にやっと気が付いたのか、それとも気付かないふりをしていたのか、もしくはプリンに夢中で気付いてすらいなかったのか…、後者が一番あり得る。プリンを一口頬張った張本人は首を傾げた。
「何だ、凛も食べたいのか?」
「別に食べたいから見てたんじゃねぇよ」
「そうか」
それなら関係はないか、と再びスプーンを持った澪に思わず身を乗り出してツッコミをいれてしまう癖は長年の付き合いで会得してしまった物だも思うと何とも悲しい事か。
「いやいやいや!待てって!」
「まだ何かあるのか?目の前にプリンがあるというのに食うなと言われているようなものだぞ!?」
しまった。勢いで言ったが目が本気だ、澪の中での俺の立ち位置とは、と心底疑問に駆られる。この現場からしてプリン以下な事はよくわかった、わかりたくなかった。変に引き止めてしまった所為で澪を不機嫌にするわけにもいかない、この現状を打破する為には…。
「一口、くれ」
「やっぱり欲しいのではないか!」
食べたいわけではないけどこれしか対処法が浮かばなかったんだ仕方が無い、怒るだろうかと予測していた澪の顔はそんな微塵もなく好機の笑みを浮かべていた。そして眼前に差し出されるスプーンとプリンの欠片。…よく考えたら間接キス?幾度と無くこのような光景はあった気がするが今となっては思春期、言い出しっぺは俺自身だが意識しない方がおかしいんじゃねぇか!?
「…食わないのか?」
「いや、そういうわけじゃ」
「む、わかったぞ。全く凛は我儘だな!」
一体何を察したんだろうか、そのドヤ顔から発せられるであろう言葉は大体ロクな事ではない。
「あーん。」
「……………は?」
「なっ、なんだ!?これをして欲しかったのではないのか?」
「されると思ってもなかった」
「何だと…!恥ずかし損じゃないか…!」
珍しく動揺を隠せてない澪が面白く、半分可愛く見えて思わず噴き出した。こういう一面を見ると女の子なんだなと自覚する。
差し出されたプリンにやっと噛りつく、口の中に広がる甘さと間接キスの喜びをしっかりと噛み締めて。

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