幼馴染という者は。
視界を埋め尽くす青一色。
いつからだっただろうか、こんなにも水が怖いと思うようになってしまったのは。白い装束の集団の中隣を歩く彼ときつく手を握り合い俯いて歩く、涙は出なかった。あの時の光景は今でも脳裏に焼き付いて消えない、これが走馬灯なのか。私の母と彼の父を奪った海に私も飲まれていくような朦朧とした意識の中、水底に沈みゆく身体に這い上がる気力は無く、伸ばした手を無造作に漂わせゆっくりと瞳を閉じた。
青が黒に変わったところで私の記憶は途切れ、
次に瞳を開けた時飛び込んで来たのは赤色だった。
異性の幼馴染がいるというのは世の中の女子からすれば憧れの対象らしいと知ったのはつい先日。聞くところによれば同い年の異性の幼馴染、家が近所、家族間交流がある等…、私の境遇はどうやら対象に当てはまるようだ。
「いいなぁ、澪ちゃん羨ましいなぁ」とクラスの女子から口々に向けられる言葉に対して私は存分に首を傾げたい、果たしてそんなにいいものなんだろうか?まず第一に私と彼は家族に近い存在だ、この前提がある時点でフラグが立つ立たないという事は消されるだろう。とても可愛らしい彼の妹と幼馴染なのは誇れる事だ、私としてはこっちを自慢したい。彼女達が期待の眼差しを向けている肝心の幼馴染、松岡凛とは彼此四年間も音信不通だ。岩鳶小に転校する事も、中学はオーストラリアに水泳留学に行く事も何一つ本人からは聞かされず親友の宗介から又聞きで聞いたようなもの。以来凛の行方は知らず勝手に居なくなった事に腹を立てた反面最初の一ヶ月程は連絡が来るだろうかとそわそわしていた時もあった。まぁ、その期待は見事に裏切られたのだが。今となってはいつ会えるかも分からない幼馴染を想い続ける程私は乙女ではないのだ、宗介もいない構い倒せる存在がいないのは少し惜しいが。
「凛の事だ、オーストラリアでもしぶとく生きているだろう」
私が心配なんてしなくても、きっと。
縁側から降り注ぐ日光が心地よく畳の上でごろごろと寝転がっていた私はうつらうつらと睡魔に負けかけていた。凛<睡魔、昔から変わらないいつもの事だ。水の中に沈むような、あの感覚が頭を支配し少しずつ眠りへと私の思考は引きずられて行った。
数分後に訪問者がくる事など知る由も無く。
ALICE+