君は何を思う



久しぶりに立つプールサイドは懐かしさを覚えるには十分だった。幼いながらにも自分も立った事があるこの場所。少し手を伸ばし触れる、と思った同時に頭の中を埋め尽くす青一色に慌てて手を引いた。近くにいればいつかは慣れるかも知れないとは思うが、昔は私もここから飛び込んで泳いでいたというのに我ながら不思議なものだ。

「澪ちゃん、早いね」

物思いにふけていたところに声を掛けられた為に危うく奇声をあげるところだった、危ない。

「何だ真琴か、江達はまだか?」
「もうすぐ来ると思うよ」
「そうか」

スカートの裾を軽く叩いて立ち上がる、私も着替えてこよう。真琴の横を通り過ぎようとした時、彼とバッチリ目が合う。

「何だ?」
「あ、いや。澪ちゃんってさ、金槌って嘘だよね…?」
「今はな」
「今?」
「泳げなくなっただけだ、凛なら知っている」

凛、という単語に真琴が目に見えてわかりやすい反応を示した。

「凛に会ったの!?」
「遙から聞いてなかったのか?」
「聞いてない…、そっか澪ちゃんにはちゃんと会ってたんだ」
「真琴達も会ったんだろう?」
「あんまり話せなかったけどね」

はにかむように笑う真琴の笑顔、昔みたことのあるそのままの笑顔のまま大きくなったのがよくわかる。こんなにもお前のことを気にかけてくれている友人がいるというのに、どうして凛は鮫柄に行ったのだろうか、転校してまで追い求めていたチームを彼らと作った筈、なのに。聞いても父の夢を叶える為みたいな回答が返ってくるであろう事はわかってはいるが…後々に辛くなって嫉妬する事にならなければいいが。


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