君と過ごす朝
明け方近くに目が覚めた。時間を確認すると父さんはもう漁に出掛けたのだろう。もう一度布団に身体を横たえる、目を瞑ると夢なのだろうか、懐かしい声が聞こえたようなそんな気がした。
「澪!起きてるか?」
「…まだ眠い」
「馬鹿早く目ぇ覚ませよ!親父たちが行っちゃうだろ!」
寝惚け眼を擦りながら凛に手を引かれて道を掛ける、肌寒い風が頬を掠める。凛の首に巻かれたマフラーがゆらゆらと風に靡くのを目で追う。そう、これは幼い頃の私と凛の日課。漁に出る前の父さんと凛の父さんを見送りに行く事、二人で約束して続けていた事だった。
「もうこんな時間…、澪が寝坊するから!」
「眠たかったんだから仕方がないだろう…、走れば間に合うはず…」
もうすぐ朝日が登るところなのか、冬の朝は特に寒い。マフラーを口元までぎゅっとあげる、港が見えてきた。
いってらっしゃい、手を振りいつも通りに見送って日課が終わる。空は少し明るみが差してきたとはいえまだ明け方だ、家への道を凛と手を繋ぎ引き返す。凛の手はあったかい。
「間に合ってよかったな」
「頑張って走ったおかげだな!」
「おう!」
にかり、八重歯を見せて凛が笑うと自然と私の頬も緩む。本当に綺麗に笑うな、私の好きな笑顔。
「帰ってからどうする?朝飯まではまだまだだろ」
「眠たいから私はもう一度寝たい…」
「お前なぁ…、まぁいっか」
それなら俺も一緒に寝る、そう告げた凛の横顔が少し赤く染まってたのは見間違いではなかった。少し強く手を握り返す、凛は何も言わない。幼い頃の私はただ凛とこんな時間がずっと過ごせたらいいのに、そう願っていた。
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