笑え、



電車を乗り継いでやって来たのはスポーツ店、今日の目的は水着購入だ。ブーメラン水着を美しくない!と批評する怜の為でもあってだ。筋肉フェチな江にとっては遙達の試着会は目の保養になるであろうが私にとっては心底どうでもいい、というのは黙っておこう。和気藹々と幾多の水着を試着する男子共、お前達は女子か!と切実にツッコミを入れたくなる。

流石に江も疲れたのだろうか、店内を見渡すが姿が見えない。そうとなっては此処に目的がない私も居ても面白みはない訳であって。まぁ、何か飲み物でも買いに行こうと店内を後にした。

「江も外だろうか…」

視界に入る赤髪はなし、何処に行ったのだろう。扉を開けた時、目の前を別の赤髪が走り去るのを見て咄嗟に声を上げた。

「凛?!」

名前を呼ばれた張本人が足を止め目が合う、何という偶然すぎるタイミングだ。私も凛も同じような表情を浮かべているのだろう。

「澪!?お前、何で此処に」
「それはこっちの台詞だ!」

見るからに何かあったのだろうこの現状にお互い言いたい事があっても纏まらず、場所を移す事にした。





「ほらよ」
「ありがとう」

軽く投げられた飲料水を受け取る。冷んやりして気持ちがいい。自販機の傍にあったベンチに隣同士で座り横目で凛の様子を伺うが何か言いたそうな表情を浮かべており、静かに彼の言葉を待った。

「何で此処に澪がいるんだよ」

此処に、の中には水から離れている私がスポーツ店にという意味が含まれているのだろうか。

「水泳部に入ったからだ」
「…はぁ!?」

凛が目を見開く、分かり易すぎるリアクションだこと。

「大丈夫、なのかよ」

この幼馴染はどこまでも優しいのだろうか、本当甘えてしまいたくなるからズルい。

「水には入ってない、今はな。そういう凛も鮫柄の水泳部に入ったのだろう?」
「知ってたのかよ」
「当たり前だ、私を誰だと思っている?幼馴染の事など簡単に分かるに決まっているだろう!」

と、意地をはってみるもののこれも嘘、江から聞いただけだ。凛は私に直接水泳関係の事は口にしないし伝えない、彼なりの気遣いなのは分かるがそれが少し寂しいと思うのは我儘だろうか。あまり長居をするわけにもいかないし遙達もそろそろ試着会を終えているかもしれない、待たせるのも悪い。

「さて、私はそろそろ行くとしようか。ありがとう、凛」
「澪」
「…どうした?」
「…いや、」
「待っているから遊びに来い、一人と言うのも暇なものなんだぞ」

返事は聞けなかった、直ぐに私から立ち去った。帰り際に見た凛の顔が酷く脳裏に焼き付いた。


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