得られたものは、何か
応援する声が出なかった。
チームメイトとして遙を応援する筈の立場であるにも関わらず視線はただ隣のコースに立つ幼馴染を捉えて離さなかった。泳ぐ姿を固唾を飲んで見守る。歓声に変わる寸前の一瞬の静寂、待ち望んでいたかと思われた勝負の決着が着く。タイミングはほぼ同時で目視だけではどちらが勝ったのかわからない、電光掲示板に表示された幼馴染とチームメイトの順位は1と2を示していた。
凛が勝ち決勝進出、遙は予選落ち。喜ばしい事なのかすら分からない、遙との勝負を望み勝利した。凛にとっては十分な結果だったのかもしれない、それなのに私の気はそこからの凛を思うと何故か不安しかなかった。今一番心配する事は遙の事だと言うのに、どうして凛の事で不安になるのか。勝負の結果が私の頭をグラグラさせる、口を開く事もなく次のレースに備えて静かに揺らめく水面を眺めていたら心配そうな顔をした江が顔を覗き込んだ。
「澪先輩…」
「!すまない、考え事をしていた」
「大丈夫ですか…?」
「あぁ、少し飲み物でも買ってくる。真琴達が泳ぐ迄には戻ってくる」
江にまで心配を掛けさせるとは私は馬鹿か。頭を冷やしに行こう、席を立つ私を誰も止める事はなく視線があった真琴だけが小さく頷いた。
喉を潤した事で頭も冷えたのか一息つくことが出来た。さて、どうしたものか。まだ戻って来ていないであろう遙を探して連れ戻すべきか否か。時計に視線を移す、まだ時間はある。少しぶらついていたら見つかるかもしれない。出会ったところで今の私が遙に何を言うつもりだ、が。
こういうタイミングだからこそよく見つけることが出来たのだろうか、廊下の先にベンチに座り込む見覚えのある人影が見えた。
「遙、此処に居たのか」
「澪」
「惜しかったな」
返事を聞くこともなく隣に座り込む、何と無く今の遙と目線を合わせるのが怖かった。遙の口から出る言葉を待った。
「…凛に会ったか」
「会ってはいないが」
「そうか」
何故ここで遙は私に凛の事を聞いたのだろうか、返す言葉が出てこないまま無音の空間が私と遙の間に流れた。
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