君煩い

今日は授業早く終わるよ、と通知が入る。丁度鮫柄水泳部に顔を出した帰りの宗介にはタイミングが良かった。恵が直接頼んだわけではないが、時間が合う時は迎えに行こうと決めているのである、別に何かあるわけではないのだが、個人的に気になる、というか心配している、というか。新たな環境でも恵は変わらず大学生生活を送っているとは思うが。過保護かと言われたら返す言葉は見当たらない。
流石に部外者が敷地内に入る事は如何かと思うので、正門付近に背中を預け、彼女の帰りを待つ。時々、行き交う人々からの視線を感じ取る事があるが、特に気にも留めず。暫く待っていると、再び届く通知と共に、小走りで駆けてくる恵の姿を視界が捉えた。
「そーすけくん!ごめんね、遅くなって!」
「気にしねえよ」
待たせていると思い、慌てて来てくれた事が目に見えて分かる。息を整える恵の、少し跳ねた髪を直すように手を添える。そのままスルスルと頭のてっぺんに手を移動させ、軽く頭を撫でると彼女は照れ恥ずかしそうに笑顔を浮かべた。
「今日も鮫柄行ってたの?」
「あぁ、練習メニューを見てきた」
「凄いねそーすけくんは!私はまだ校内の地図が覚えられなくて困っちゃうよ…」
「…確かに迷いそうだな」
他愛の無い会話を繰り広げながら、足先は地元へと続く駅へ向かう。何処か、恵と共に過ごした鯨津高校の時を思い出す。岩鳶と鮫柄では出来なかったというか、まだ余裕も無かったあの頃。今だからこそ、こうして隣を一緒に歩けている、不思議と他人事のように思ってしまうが。
話題は尽きないのか、身に受けた真新しい体験を彼女は嬉しそうに言葉にして伝える。其れを聞くだけで、満たされる心。細やかなこの時間が、終わる事なく続けば良いと願った。
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