ゆれるゆれる、君のほうにゆれる

羽風薫。同じクラスの同級生、ついでに部活も一緒、アイドル科に入ってからの俺の親友。俺と薫には正反対なところが幾つもある。
人様の家庭事情に首を突っ込むような野暮な事は流石にしたくないから詳しくは知らないけど、一つは薫が父子家庭で俺が母子家庭だというところ。
二つ、俺は所属してるユニットが好きで楽しいから極力参加したい反面、薫はユニット活動はあんまりの模様。多彩なパフォーマンスを持っての集客力、やればできる子だってのに才能の無駄遣い。見様見真似で薫の真似事をしてせめて先輩らしくと、率先出来るようにはしてるけど薫には程遠い。
三つ、髪の色…ってこれは割と似ているかな。
四つ、ここからが特に大事。薫は女の子が好きで男嫌い。俺は女の子の存在は好きなんだけど、家庭事情も影響して女の子が、女の人が苦手だ、思春期男子らしからぬ苦手意識を抱いてしまってる。
五つ、俺の事だけ"ななし"と呼ぶ。

後半がまるで自惚れのような感じがするけど、俺自身も疑問に思ってる事なんだ。確かに、付き合いとしては三年目だ。それでも男嫌いの薫が、中性的な顔立ちはしているとは言われる事もあるけど性別上は男である俺と連んでくれているのか、何時まで経ってもわからない。今でもそう、寝不足だからといって隣で寝転んで静かな寝息をたてている親友の言動が俺には全く読めない。自分の事を全然話してくれないんだ。
「薫はズルい」
何で寝不足何だ、昨日は寝てないのか?そんな事俺が知る必要も知らされる必要もないのはわかる、それでもだ。爽やかに浮かべる笑顔の下で何かを秘めているのか、理解させようとしてくれない。一方的に甘やかされてるような、そんな関係はもう嫌なんだ。緩やかなカーブを描く襟足に指を絡めると伏せられていた瞳が開かれた。
「なーにやってんの、ななし」
「え、か、薫!寝てたんじゃ…?」
「起きたよ、さっきね」
誰かさんが優しく触れてくるから起きるしかないよね、と。不意打ちすらも許されない、柔らかな笑みを浮かべる薫は、俺より一枚も二枚も上手だ。対等になりたい、それなのに。
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