優しい青を抱いた手

陽も落ちかけた海辺を歩く薫との放課後寄り道コース。髪を揺らす海風が少し冷たさを感じる。隣を歩く薫は海を見つめ、ななしは薫を見つめていた。視線を変えないままななしは口を開く。
「だいぶ肌寒くなってきたなぁ」
「チョコレート色のセーター解禁?」
「もうそろそろ解禁!薫は寒くないん?」
「まだ大丈夫かなー」
何気無い会話を交わしながらもななしの思考は先を見ていた。夏が終わり秋になり冬が来る、その後を。薫はどうするのだろうか、気になる事ではあるが中々切り出すことの出来ないままいつもの感じを崩さないよう触れずにいた。
「薫はさぁ…、隠すの上手だよね」
「ななしも人の事言えないと思うけど?」
「え、俺薫に隠し事何てしてへんと思うけど!」
「ほんと?」
「本当!」
否定をしながらも多少図星を突かれたような気がしたが隠し事ではない、聞けない事だと咄嗟の誤魔化しで薫の手に触れた。否定される事はなく細くて長い指が重なりやんわりと握り返される。触れ合ったところがあたたかい。薫は鋭いから考えている事何て見抜かれているかもしれないけど、後先なんて考えずに一緒にいる今がいい、握る手に少し力を込めた。
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