ガラガラと音を立て空いた先の保健室には人気はなく無人、いるはずの先生も席を外しているようだ。一箇所だけ締め切られたカーテンを少し開け顔を覗かせると探し人は小さく寝息を立てていた。
「かおるー、授業終わったよ」
声を掛けても起きないところを見ると余程のお疲れか、それとも寝不足か。枕元に顎を乗せ、綺麗な薫の横顔を眺める。輪郭に沿って肩口へと流れる髪のラインが色っぽい。無性に触れてみたくなり手を伸ばす。サラサラとした髪が掌に、指に、絡みつく感覚が心地よい。こんなにも無防備な薫を拝めて、髪を撫でれる事が出来るのは自分だけかも知れないと多少の自惚れはある。少しぐらい特別に思ってもいいものだ。やわやわと髪を撫でていた手は無意識に首元に、鎖骨へと降りていく。指先が触れた瞬間。
「何、触れたいの?」
閉じられていた瞳が薄っすらと開き、視線が交わる。口元に浮かべられた笑みも合わさり、色気を放つ寝起き姿の薫に思わずどきり、胸が高鳴る。慌てて手を離そうとするが、時すでに遅し。掴まれた手首は逆に薫の方へと引き寄せられる。勢いを殺すことはできず、ぎゅっと目を瞑る、遅れてくるのは唇に柔らかい感触。
「ななしに寝込みを襲われるなんてねー?」
離れた唇が意地悪そうに言葉を紡ぐ。違う、誤解だって!反論を述べようと声をあげようとするものの、言葉は声にならず再び薫の中へと吸い込まれていった。