淋しがりやの碧海を抱く

「暑くてしにそう」
授業合間の教室で机に突っ伏してる親友は仮にもアイドルらしからぬ今にもくたばりそうな声で力尽きていた。そんなに暑いのならそのベストでも脱いだらいいってのに、とは毎度の事ながらに思うがあれはななしのお気に入りのようで。見ているこっちが暑くなるよ、全く。解くと俺より長い髪に手を添えポニーテールにでもしてやろうか、と模索する。好き勝手に髪を弄られてるってのに顔も上げず身動ぎ一つすらしないななしに溜息が出る、どれだけ夏が苦手なのか。
「おーい、生きてる?」
「辛うじて…」
「冷房入ってんのにダメとかどんだけよ、ガーデンテラス行く?」
「無理、動けないというか動きたくない」
今日は相当ダメな模様、仕方ないなぁ。ポニーテールに仕上げるまで好きに弄って遊んでやろう。喋る気力はまだあるみたいだからこのまま話を進めることにする。
「じゃあ海行こう、海。歩くだけでいいからさ」
「海なら行く」
泳げないのは知ってるし、ななし自身もあんまり海には入りたがらないのはわかってるけど海辺の散歩は好きらしい。俺に合わせてくれているのかどうなのか。それなら嬉しいんだけど。顔を上げたななしの髪は俺の手によって見事に編み込みアレンジをされており、ただでさえ中性的な顔だってのに自分でしておきながら吹き出しそうになった、似合ってる気もする。何笑ってんの、気付いていないのか首を傾げるななしを横に席を立ち、手を取った。
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