ながい睫毛につもる

ころんころん。 鞄から落ちた赤い包みの飴が小さな音をたて床に転がり落ちる。何処かへ行ってしまう前に慌てて手を伸ばして掴み取る。同じ包みの飴は数個、まだ鞄の中に残っていた。事ある度にみかにお裾分けされる飴だが、何となくの勿体無い精神で全て食べきれずにいた。

手の中にある飴をくるくると包みを剥がし口に放り込む。ころころと、甘さが広がる。みかが好きな甘い味、自然とななしも好きになっていた。みかと好きな物を共有しているようで悪くない。浮かぶ笑みは幸せの証、ご満悦な気持ちに浸っているとカラカラと音を立てて扉が開く。濡れ羽色の髪がななしの視界を捉えた。
「みか」
「んあ?ななしちゃん!早いなぁ、もう来とったん?」
「うん、衣装の続きあるから」
駆け寄ってきたみかは机の上に広がる作りかけの衣装を見て笑顔を浮かべる。みかの笑顔が好き、見る度に心がドキドキして暖かい。
「難しいとこあって、手伝って貰ってもいい?」
「おれでええの?」
「みかがいい」
「せやったらええよ!」
衣装じゃなくてななし自身に向けられた笑顔。宗が来るまでの間、二人きりの部室。この空間だけはななしにとって幸せでこの上ない。ずっとこんな時間が続けばいいのにと、淡い夢を抱いて。
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