ゆるいようにゆるく

かぶり、小さな口が噛み付いたところからは溢れ出んばかりの生クリームが溢れ落ちそうになる。少しハラハラした気持ちでその光景を見ていたが食べ慣れているからだろうか、生クリームは赤い舌の中へ綺麗に溶けていった。
みかの手元にも同じシュークリームが一つ、ななしに手渡されたものだった。みかはもっと食べたほうがいい、そう言われると断れる筈もなく一口被りつく。口の中に甘さが広がる、嫌いではない味。ななしが好きな味だからだろうか、自然とそう思ってしまっているところがあるからだろうか。同じものを共有することは食べ物であれ何であれ、嬉しいことに変わりはない。
「みか」
琥珀色の瞳がこちらを見る。食べていたシュークリームは袋の上に置かれ、机を挟んで身を乗り出したななしとの距離が近付く。高くで結われた月白の髪が揺れる。瞬きをする事すら忘れ、一連の動作を魅入っていると頬に何か暖かい感触。
「生クリームついてたよ」
「ななしちゃん?」
縮まった距離は元通りになり、何事も無かったかの様にななしは再びシュークリームに手を伸ばしていた。先程の行為は何であったのか、みかの思考は未だ追いつかず、触れられたような気がする頬に手を当てた。
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