エリーゼはぼくのために

突然、妹が出来ると聞かされた。祖父の行動とは言え流石に理解を示せない頭は混乱をきたす。一体何処の誰が、そもそも何故なのか。諸事情すら聞かされないまま、宗の目の前に連れて来られた一人の少女。一瞬、世界が止まったかの様に思えた。
その見た目はまるで精巧な人形の様。アルビノを思わせる程透き通る白い肌を覆う銀色を宿す長い髪。伏せられていた黄金の瞳とゆっくり視線が交わる。芸術、の一言に過ぎない。その様な者が人間であっていいのか理解にさえ苦しむ。鼓動は高鳴る事を止めようとしない。
「…ななし、です」
ななし、と名乗る少女は此方へと歩みを進める。嗚呼動いている、人形ではなく本当に生きているのか、まだ実感が沸かない。目の前の彼女が、今日から自分の妹になる事すらも。

後にその可憐な少女の生い立ちを知り、兄として生涯守り通そうと誓うなど、この時は知る余地もなかった。
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