残夢

正直、見ていられなかった。まがいなりにも昔から仕事上付き合いがある身内の様な者だ。本来の彼女を知っているからこそ、日に日に傷を負い摩耗していく姿は痛々しく、このまま歩みを進めればいずれ壊れてしまう未来は明確に見えている。そうなる前に踏み止まるか、道を変えるか。お節介かも知れないが、手を差し伸べる事が出来ない以上、助言する事ぐらいしか手法がない。
「いい加減誰かとユニット組みなよ、一時的でいいんだからさ」
「それをしたら、ななしでいられなくなっちゃうから」
地面に手を付き、へたり込むななしが振り返る。無理に張り付けられた笑顔に苛立ちが積もる。自分を痛めつけて殺してまでする必要があるのか、と。
「ななし…、あんた壊れるよ?」
「それでもいいの、やりたい事全部したいんだもん」
「…ばっかじゃない」
「うん、ほんと馬鹿みたい。ね!ずみくん、最後までななしを見届けてくれる?」
「そんなお願い、きくわけないでしょ」
「そうだよね、ありがとう」
嗚呼、嫌だ、嫌だ。何を助言しても、彼女は意見を変える事がない。死に行く様を見つめるしか出来ない。
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