暮れゆく夏のメイズ

今となってはもう馴れてしまった手付きで緩く纏められた青緑のシュシュを解く。柔らかに床に散らばる似たような色をした髪色は夕暮れと混じり合い互いの色を深く染め上げる。
ななしの髪を解く何気ない行為は薫の独占欲と背徳感を煽るには事足りており、何よりも好んでいた。手を添え、掬い上げては手元からはらはらと流れ落ちる髪に飽きる事なく口付けを何度も落とす。
組み敷かれてから一向に進まない行為に痺れを切らしたのか、それとも照れ隠しもあったのか。髪に触れている手首を掴んだななしのもう片方の手は薫の口を覆い隠した。
このななしの行動は予想していなかったのか、薫は切れ長の瞳をぱちぱちと瞬かせ、恨めしそうにこちらを見上げる瞳と視線を合わせた。声に出さなくとも瞳を見ればわかる、求められている、と。制止をかけ塞がれた下で薫は笑みを浮かべた。
「わかったわかった。やめやめ、ね」
重心を落とすと口元を塞いでいた手は自然と退けられ、その手首を軽く床に押し付ける。
薫、と紡がれるであろう声ごと飲み込むように唇を重ね合わせる。薄く開かれた唇の隙間から滑るように舌を差し入れた。
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