閃堂秋人はおとこのこ
お風呂上がりに私は1人立ち尽くしていた。ベッドルームには最近なかなか会えなかった彼氏。目の前には最近買った彼のイメージカラーの勝負下着。頭の中ではちょっと前に流行った、1人で作業してる彼氏の前に裸の彼女が出てきたらどうする?って動画を思い出していた。
全裸で出ていくのは無理。いくらバスタオルを巻いてたって普通に恥ずかしい。でも、この勝負下着のお披露目だと思えば、それならいけるかも。彼とそういうことをするときはいつもちゃんと電気を暗くしてくれるから、あんまり見えないだろうし。どうせならちゃんと見せたいだけだし、と自分に言い聞かせてベッドルームのドアを開けた。
「しゅうとくん」
「ん、おかえり……ってななな何!?は!?え!?服は!?」
「かわいくない?この下着」
「かわ、かわい、かわいいですけど!!は!?どした!?」
ベッドの上でくつろいでた秋人くんは、一目見るなり大混乱で持ってたスマホ放り投げてどたばたしながら立ち上がった。転がったスマホがフローリングに落ちて大きな音を立てる。大丈夫かな。画面割れてないかな。
「えっほんとまじでどうしたん。めちゃくちゃ嬉しいですけどなんかあった?」
「この色見て気付くことない?」
「……俺の色?」
「せーかい!先週新しいの選んでたらぴったりの色見つけたんだあ」
「ソウデスカ…………」
口に拳を当てて、なるべく見ないように横向いてる秋人くんの横顔と耳がほんのり赤くなってて嬉しくなる。恥ずかしくても明るいところで見せてよかった、と思うけど、同時にじわじわと不満が募る。
きみに見せるために買ってきたんだから、もっとちゃんと見てくれなきゃ。
「ねえ、ちゃんと見て?」
「ゔ〜、まって、ダメ。ちょっと落ち着くからまって。まじで今頑張ってるから、色々と」
「いらない努力だ」
「いらなくねえだろ……」
「不毛な努力だ」
「言い換えなくても……」
横向いてる顔の前にちょっとお邪魔してみても、抵抗するみたいにきゅっと目を瞑ってしまった秋人くんはいよいよ私のことを見てくれない。なによ、私がいじわるしてるみたいじゃない。してるか。でも別に彼氏だし、好きでお付き合いしているわけだし、君にならなにされてもいいんだけどって思ってるの伝わってる?
「もっとすきにしていいのに」
不服を孕んだ言葉がぽそっと床に落ちる。ちょっと足りないけど、まあ目的は果たせたし。ちゃんとかわいいって言ってくれたし。パジャマ取ってくるねと背を向けたら何かに左手首を掴まれる。秋人くんしかいないけど、何?ちょっと痛いくらいに握られていて困惑しながら振り向くと、え、まって。なんでそんな目してるの。
「いいんだな?」
くん、と左手を引かれてそのままベッドに連れ込まれる。目を丸くしている私をよそにあれよあれよと両手首を片手でまとめあげた秋人くんは首筋に吸い付いて、少しの痛みと一緒にいくつか痕を残していった、のだと思う。私の頭の中はさっきのはじめて見た秋人くんの表情のことでいっぱいで、やっと離れた、と思ったら同じところをべろりと舐めあげられてひぅ、と声が漏れた。もう片手は腰の辺りをゆるくなぞっていて背中がぞわぞわする。無意識に息を止めてたみたいで思い出したみたいにはふはふ息をするけど、上下する胸を見て目を細める秋人くんはこわい顔でわたしの背中に手を回してブラのホックをぱちんと外した。知らない知らない、聞いてないこんなの。かわいくてうぶな秋人くんはどこにいったの。こんなぎらついた目で手慣れた秋人くんなんてしらない。
「無理って言っても止めてやんねぇぞ」
ナマエが言ったんだからな、と呟く言葉は彼の舌と一緒に口の中に押し込まれた。