閃堂秋人と友人の結婚式


 

「え、なに?姫?」


部屋にこもって姿を見せなかった恋人が、突然ドレスで出てきたら流石に誰でもびっくりすると思う。びっくりしすぎて思ったことをそのまま口走ってしまったし。ぽかんと口をあけた俺の前でナマエはねえこれ可愛くない!?とくるっと一回転してくれるから、目を瞬かせながら脊髄反射でかわいいと返す。返答に満足げなナマエはやっぱり?すごい可愛いデザインだと思ったんだよね〜!と浮かれている。かわいい。ドレスというより、ナマエが。


「このワンピース、友達の結婚式に着て行こうと思ってるんだよね。あとアクセサリー揃えて、ネイルも、まつげもどうにかしたいな。予約しなきゃ」


友達の結婚式。なるほど。そこで着る予定のやつをお披露目してくれてんのか。でもこんな可愛かったらナマエが主役になっちゃうじゃん。大丈夫なのと聞いたらなにが?と怪訝な顔をしている。だめだろ。しかもここからもっと可愛くなるみたいなこと言ってる。だめじゃん!


「まって。これ以上可愛くなられるとさ、いろんな奴らに声かけられそうで怖えんだけど」


俺の心配をよそにきょとんとした顔のナマエが「……?秋人くんが守ってくれるんじゃないの?」と心底不思議そうにするから、信頼されてるのがわかってめちゃくちゃ嬉しい。絶対守る。でも俺結婚式行けねえし。その友達知らねえし。


「いや、俺がいるとこなら絶対守るんだけどさあ。その友達の結婚式俺行けねぇじゃん」
「じゃあ終わったらすぐに迎えにきて?誰かに横から拐われちゃう前に」
「は?むり誰にも触られないで。日程教えて。その日絶対空けるから」
「やったあ!じゃあ一緒に友達も送っていってね。2人か3人、たぶん3人だと思うんだけど」


友達に大丈夫だよって連絡しとかないとってにこにこ笑ってるナマエ。これ、もしかして。
「……運転手が欲しかっただけ?」と微妙な顔で聞いたら、そんなこと……、あるけどってナマエは悪戯っぽく笑った。あるんじゃん。
騙されたから形式上むっとした顔はしているけど、ナマエをどこの馬の骨ともしれないやつに掻っ攫われるわけにいかねぇから迎えには行く。1番可愛くて綺麗な姿のナマエなんか絶対見たいに決まってるし。でも俺が内心そう思ってるなんてナマエは知らないから、怒らせたかもしれないってあからさまにあわあわしている。かわいい。けど、俺の純情をもてあそんだんだからなんらかのお詫びはあってもいいと思う。あわよくばご機嫌取りのちゅーとかしてくんねえかな。しょんぼりと眉を下げたナマエはごめんね、でもね、と俺の耳元で囁いた。


「でもね、それと同じくらいね、結婚式の場で秋人くんを見せびらかしたい気持ちもあるんだよ。ちゃんとブーケも取ってくるんだから、待っててね」


そのまま頬にあたたかくてすこし湿ったものが触れて、ナマエは耳のふちを赤くして着替えてくる!と踵をかえす。固まったままの俺を置いて。なんか今めちゃくちゃ可愛いこと言わなかった?
結婚式のブーケトス、ってどういう意味だったっけ。検索して、あまりのことに机の角に足をぶつけながらも急いでナマエを追いかけた。だからそういうのは俺から言わせてって!