「僕の勝ちだ!はは、何か賭けておけばよかったな。転入生ともあろう者にまさか勝てるとは」
「私これ本当に苦手なんだ……。最初に授業でナティとやったときもぼろ負けだったの」
「そうなのか?まあ確かに力加減がわかってはなさそうだったな」


彼女が引き寄せ試合に手慣れていないというのは噂話で知っている。だから誘ったとは絶対に言わないが。彼女の選択した色のボールは見る影なく地に落ちていて、ここから挽回の手はないことを示していた。


「噂の転入生にも苦手なことがあったってわけだ。ふん、朗報じゃないか」
「"転入生"って言葉は"万能の天才"って意味じゃないんだよリアンダー……。うう、勝手にみんなの期待値が高いの……。私にだってできないことくらい山ほどあるわ……」


ぺしょぺしょになりながら僕をぽかぽか叩く転入生の頭を宥めるように撫でるけど、僕の胸は妙な高揚感でいっぱいで、口角が上がるのを必死に堪えていた。実際、僕もすぐになんでも飲み込み活用してしまう彼女を天才だと思っていたし、自分と比べて苛立つこともままあった。

でも、彼女にも苦手なことがある。それに、今叩いている力だって限りなく弱い。密猟者を倒しているなんて噂も聞こえてくるけど、エクスペリアームスなんか食らったらその時点で死んでしまうんじゃないかとさえ思う。


「それなら僕と練習すればいい。転入生って言葉の意味を書き替えてやろう」
「どうしてそう自信満々なの……。でもやるわよ。やられっぱなしじゃ終わらないんだから!」







「どうしてこのポールはこんなところに立ってるの!?しかもとんでもない弾力で!」
「そういうスポーツなんだよ!」
「もしかしてこれあなたのボールをすべて落としてしまえば私の勝ち?」
「その通りだがもう少し躊躇いってものがほしかったところだな!?」



そうは言っても飲み込みの早い転入生と練習すること数試合、陽が傾いてきた頃合いにその瞬間は訪れた。


「やったあ!初めてリアンダーに勝った!」
「ぐ、しかしまぐれだとしてもやったじゃないか!」


考えていたより早くその時は訪れたけれど、ぱちんとハイタッチした時の転入生の手がほんとうに小さくて、やっぱりさっきの心配は間違ってないかもしれないと思う。小さくて柔らかい手。弾く力だって信じられないくらいに軽い。


「今日はずっと付き合ってくれてありがとう、本当に次の試合は私が出ていいの?」
「ああ、大したことじゃない。僕の練習にもなったしな。ここまで付き合ったんだ、無様を晒すような真似は許さないからな」
「ふふ、約束するよ」


「……あと、昼夜問わず城の外を駆け回ってるらしいが、あんまり危ないところには近づくんじゃないぞ。いいな?」


ぷふっと吹き出した転入生が、にこにこしながらリアンダーってお父さんみたい!なんてことを言うから眉を顰めながら彼女の一回り低いところにある頭を思いっきりぐちゃぐちゃにする。僕が君の父親?冗談じゃない!


「いいか?僕は君のお父様じゃない、君の彼氏になる男だ。その呑み込みのいい頭でよく覚えておくんだな」


ぼさぼさ頭の転入生が固まっているのを尻目にさっさと寮へと足を向ける。……待て、僕は今なんて言った?なんで突然?頭が完全に停止して、どうやって自分が寮に帰ったのかもわからないくらいだ。


「ねえどうしたのリアンダー、貴方が真っ赤な顔で人やら物やらにぶつかりまくってるって面白がられてたよ?……って本当に真っ赤じゃない!」って同級生のナツァイ・オナイに話しかけられて、ようやく我に返った僕の絶叫が賑やかなグリフィンドールの談話室に響き渡ることになった。