記憶力がちょっとあれな人が忘れないよう走り書きしてるメモ帳です。雑感を呟いたり覚え書きで補足したり五月蝿いです


▼ 05:16 だー 呟き

召装えどがー先生方に変わりましたね……!凄く欲しいです……が、朗読CDや資料集やアンソロなどなど買おうと思っているので引き際を見極めがたいガチャは回さないように気を引き締めたいと思います。でもほしい……
引き司書の方、よく考えたら司書の話してるのに司書まだしばらく合流しない。そして先生方を頭よくかっこよく書きたくてもかけないジレンマでウワワワってなっています。正気に返らないようにしないとかけない。追記はその途中までです。


 慎重な手つきで、植物の模様が施されたフレームに囲われた、丸い装飾部分の金具に触れる。機械仕掛けのボタンのように突出したその平らな円形は、500円玉硬貨より一回り大きいくらいで、しかし押しても固い感触しかなく、蓋は開かない。円形の凸は横から押しても微かに揺れるだけだ。
「ボタンじゃないのか」
「押して駄目、では引いてみましょう」
 円の縁は僅かに溝がある。そこに爪を引っ掻けるようにしてぐっと引くと、円は持ち上がってかつりと卓に音を立て、ころころと財布から逃げた硬貨のように転がって床下へ落ちてしまった。足元まで届いたそれを新美は拾い上げた。
「おお、外れた」
「鍵穴みたいだね」
 円形の窪みに覗いたのは何かを差し入れられるような細く小さい穴。丸い飾りはこの鍵穴の蓋の役割だったのか、と手の内のそれを弄る。

 田山が一度蓋に手を掛けた。が、開かない。
「うぐぐ、やっぱり閉まってんな。でも鍵なんてどこにあるんだ、司書が持っていったとか……?」
 進退窮まったか、唸る田山の傍で鍵穴を覗いた島崎が首を傾げた。
「これ、変な感じするね」
「え、変って何が」
「合わない……というか、違和感がある。この鍵穴、せいぜい小指の爪の先くらいの長さしかないよ。匣の大きさや細工に見合っていない」
「ああ、ワタクシも違和を覚えていましたが、確かに。
 一抱えほどもある宝箱ならば、それに相応しい揃いの装飾が施された鍵を連想しますが、この鍵穴ではまるで粗末な薄っぺらい鍵が思い浮かびます」
「あー、そうだな」 なるほど彼らの言い分もわからないことはないと相槌を打つが、田山にはそこまで気になるようにも思えなかった。「鍵穴が小さい方が開けられにくいとかじゃないか? 鍵師じゃないからわからねえけど」
「君、この匣開けられたりしないの。奇術とかで」
「エンターテイナーとしては不可能などないと豪語したいところではありますが、種や仕掛けがないとちょっと」
「夢も現もままならねえなあ」
 ここぞとばかりの反撃を江戸川は新美の元に行ってかわす。ピッキングなど道具があるならいざ知らず、さすがに素手で開けられるような業もなければ力もない。無茶ぶりというものだ。

 新美は蓋を弄っていた。単体で見れば蓋というより、メダルのように見える。
「そんなにしげしげと見て、どうかしましたか」
「あのね乱歩さん、これ、鍵穴を蓋していたときはただ平面だったでしょう」
「エエ、なので押ボタンかと思ったんですけれど、……おや」
 そう言って新美が見せてくれたメダルの表面は、乏しい光に影を浮かび上がらせている。彫り物がしてあったのた。それは精巧だが味気なく簡素で、六角形のような図形だった。彫刻のなされた逆の面は先程見たように光沢を放って傷ひとつなく、刻印は蓋していた鍵穴に面していたのだろう。
「変哲のない装飾なら外側に飾りのある面を向けて嵌めそうなものですが」
「そうでしょう? それに、この六角形みたいな図。籠目とか麻の葉模様みたいにも見えるけど、この台座も同じものがあるし、なにか意味のあるんじゃないかなって思って」
 新美は匣と手紙のおいてあった台座の側面を指差した。

 六角柱は、濃淡の異なる石から成る規則正しいモザイク模様が一面に敷き詰められていた。その手の込んだ見目から、机というよりも台座や、祭壇と呼ぶに相応しく思えるのだ。中には新美が麻の葉と称した六角形も見えた。
「ふむ、何か意味の持つ記号であるなら、模様部分を内側にしていたことにも理由があると」
「そう考えても変じゃないよね。このメダル自体が鍵とか! 表で嵌めたら蓋開かないかな?」 江戸川の意見に後を押された形で新美は一瞬顔を輝かせたが、すぐに消沈する。「でも、鍵穴があるから違うかな」
「やってみようぜ、鍵穴の大きさを考慮したらブラフかも知れねえし」
「花袋、なんか遣る気になったね」
 さっきは侵蝕者に怯んでいたのに、とか、そういえば花袋のいう美少女に彼も入るんじゃなかった、とか。そういう含みがあったかどうか、田山は全く気づくことはなかった。
「そりゃこのまま此処にいたって何にもなりやしない。開けなきゃならねーならオレが開けた方がいいだろ」
 匣の中に侵蝕者が紛れているなら、精神の安定性と武器種弓の回避値を鑑みれば田山が適任ではある。新美から受け取ったメダルをそのまま金属の触れあう音をさせて、もとの位置に差し込もうとしたが。「あれ、……嵌まらない」
「開かない、じゃなくて?」
「おう、嵌まらん」 メダルはかちゃ、かちりとぶつかり合う音が鳴るだけで、穴に入る気配がない。不思議に思って、メダルを月明かりに透かすように翳してみると。「裏と表の面積がちがうのか」
 厚さ3mmほどの側面が俄に台形を描いている。先ほどぴったりと隙間なく埋まっていた穴も同じ角度ですぼまっていて、阻まれてしまうのだ。
「じゃあ、マークは表裏を分かりやすくしてるだけかぁ」
 新美は綺麗なメダルなのに、と残念そうに呟き、島崎はメダルを観察して言う。「なんで面積が違うんだろう」
「そういう作りなんじゃねえの。うーんしかし、どうしたもんか」
 鍵穴といいメダルといい、形状に飽くなき疑問をぶつける島崎にメダルを渡して、田山は早々に正攻法で匣を開けることに見きりをつけた。

 穏やかな開封など贅沢は言っていられないからといって、匣を壊してなかを見るにも、獲物はない。前空間には台座と匣と手紙が一つずつあるだけだし、前述の通りに己が武器は図書館で眠っているし。(あったとしても加減を間違えて中にあるかもしれない宝さえ壊しかねないし、本の外で武器に変えられるかも定かではなかったが。)

 明かりなくして進めるかどうか、ためしに光の境界に近寄って向こう側に手を指し伸ばしても、もったりとした影が手や腕にまとわりつくばかりだ。かつて電燈に欠いていた時代にも見たことのない、光を遮断しているよりもむしろ、吸収しているような暗闇。
 人の目に見える光景は、物体に当たって反射した光が眼球に達することで脳が認識できるのだという。物体の色が黒に近いほど多くの波長の光を吸収され、光量が少なければ反射光も減って、不明瞭な景色となる。
 しかしこの闇よりも暗く昏い暗黒は、不明瞭を超えて全く洋墨の海で、人間がとらえることのできる光景のあちら側、映し出せない深淵の端がすぐそばにあるようで。進めば最後、剥き出しの皮膚や耳や爪の先や背筋から闇にざわざわと、どろどろと、うぞうぞと侵蝕されてしまうようで。恐ろしいのに、先など見えもしないのに、目を離しがたい闇が、そこに。

 ──フ。

 おののいた意識は、鼓膜を震わせた微かな音によって引き上げられた。今何か、笑い声が聞こえたような。
「フフフ、嗚呼、なるほどなるほど」 今度ははっきりと聞こえたその発信源、江戸川はさも愉快でたまらないという風に、芝居がかった動作で掌を島崎に差し出した。「……え、なに? ダンスの誘い?」
 突拍子のないその行動に困惑したのは田山だけでなく、島崎も死んだ目を丸くして、江戸川の意図を探るように見る。江戸川はにやにやと悪戯っぽい笑みは崩さない。
「エー、そう! エスコートさせていただきたく。ですが、ダンスではございませんよ。それはワタクシの領分ではない」
「ということは乱歩さん」 彼の調子にパッと目を輝かせたのは、悪戯仲間の新美。「謎解きですね!」
「ハ、つまり──何だ、匣を開ける算段でも?」
「ええ、ええ」 應揚に頷く。さて、どんなトリックで匣を叩き割ってくれるのかと思えば。

「鍵はね、メダルなんですよ。南吉くんの指摘した通りにね」