執事降谷と身分違いの恋※


「ねぇ、降谷。私恋がしたいわ」

僕が仕えている苗字財閥の御令嬢名前様は幼い頃から欲しいものはすべて与えられて育ったためそのまま真っ直ぐ我儘に成長した。そんなお嬢様が恋がしたいと言い出したのは高校2年のとき。急にまた何を…と思いながらも耳を傾けると同じ学校の友人に恋人が出来て羨ましいとのことだった。まあ、そういう年頃だし今回に関しては我儘というよりむしろ自然なことか。それをどうにか上手く納得させるのが僕の仕事でもあるんだけれども。

「だって私、将来はパパの決めた相手と結婚させられるのよ。その前に自分が好きになった人とお付き合いしてみたいじゃない」
「まあ、若いうちに色々経験を積むのは悪いことではないと思いますが…旦那様も名前様の将来を心配していらっしゃるのですよ」
「パパが心配なのは私じゃなくて苗字家の未来でしょ?私はパパに都合のいい相手の家に嫁がされるのよ…まるで取り引きの材料みたいに」
「そんなことは…それにまだ先のお話です。もしかしたら名前様がお気に召す相手かもしれませんし」
「どうせ他人事だと思ってるんでしょう。降谷なんか嫌いよ、あっち行って!」

呼びつけておいて追い出される、これは日常茶飯事なので慣れたものだ。それに仕事上ああは言ったが正直同情するところもある。何不自由なく育った名前様だが、幼い頃からやりたくもない習い事をさせられたり恋愛禁止令を出されたりとストレスを感じることも少なくはない。そんな彼女の唯一の捌け口が僕であるのならば、いくらでも受け止めてあげようと思う。

専属の料理人に「今日は名前様の好物を用意してくれ」と伝え他の職務をこなしていたのだが…数時間後、食事の時間になっても名前様が現れず緊急捜索が始まる。GPSを付けられているため居場所を特定するのは容易いことだったが、彼女は財閥の御令嬢だ。誘拐の線が疑われたりお嬢様自ら出掛けたのだとしてもこの少しの時間で危険が及ぶ可能性だってある。ましてやもう外は暗くなっている。大事な娘の脱走劇に旦那様は毎度のことながらひやひやさせられて、それをぶつけるかのように名前様を叱る。そして当然世話係の僕は更にきつく当たられる。

「降谷、お前がついていながらどういうことだ?こういうことがないようにお前を雇ったはずなんだがな」
「申し訳ありません…」
「やめてよパパ、降谷は悪くないんだから!」
「高校生のお前に出し抜かれるような腑抜けはいらん。どうやら私はお前を過大評価しすぎていたようだ」
「今後このようなことがないよう肝に銘じておきます。お嬢様にも今一度、旦那様がどれほど心配なされていたかを私のほうからお話させていただきますので」
「…ん、あまりガッカリさせるなよ」


お嬢様の部屋に戻りベッドに並んで腰掛ける。久しぶりにこってりしぼられ名前様はあからさまにしょんぼりとした顔をしている。この顔を見るとどうも可哀想になって、ハッキリ言わなければいけないことも強く言えなくなってしまう。そんなことも出来ないのは世話係失格だとわかっているのだが…どうやら僕はお嬢様を甘やかす癖がついてしまっているらしい。

「ごめんね降谷、私のせいで」
「いいんですよ。でも高校生でお酒とは、感心出来ませんね」
「宅飲み…というものがどういうものか知らなくて、おうちでパーティーするものだと思っていたの」
「どんな理由であれ法律違反はいけません。今回は未遂で済んだからいいものの、お酒で酔わせて何をされるかわからなかったんですからね」
「だって、仲のいい子が素敵な男性を紹介してくれるって言うんだもの…ちょっと気になるじゃない」
「まったく…お嬢様はそんなに恋愛がしたいのですか?恋愛はいいときもありますが辛いお気持ちになることだってあるのですよ」
「そうなの…?」
「そうです。…ところで、その男性というのは名前様のお眼鏡にかなうお相手だったんですか?」
「…ううん。降谷のほうがかっこいいわ」
「ふふ、今何か嬉しいことを言ってくれました?」
「な、何でもない…!今回は大したことなかったけど次はもっと素敵な…」
「はぁ…全然反省していないようですね。そんなに恋愛がしたいのなら、僕で試してみるというのはどうです?」
「え…?」
「恋愛がしたいお嬢様と脱走を阻止したい僕、なかなかいい提案だと思いますが…って出過ぎた真似をしてすみません。僕なんかじゃ役不足ですよね」
「……いいわ。貴方、見た目は素敵だもの」
「ありがとうございます。僕との恋愛ごっこはお嬢様に正式なお相手が出来るまでの期間限定になりますが、それまでにしっかり恋愛や男のことを教えてさしあげますのでご安心ください」
「…降谷は、恋愛したことあるの?」
「気になりますか?まあ、ないと言ったら嘘になりますね」
「…そう」
「どうされました?そんな反応をしたら、見た目だけじゃなくて僕のことが好きなんじゃないかと勘違いしてしまいますよ…?」
「あっ…」

お嬢様の身体を自分の腕の中におさめてぎゅっと抱きしめると、緊張しているのが身体の硬さで伝わってくる。可愛いな…

「どうです?あったかいでしょう」
「ええ…すごく。それに、降谷って痩せて見えるのに意外と逞しいのね…」
「お嬢様をお護り出来るよう、鍛えてますから。この感じ、嫌じゃないですか?」
「嫌じゃない…でも、ドキドキするようなホッとするような…変な感じがするの…」
「ふふ、いちいちそんな可愛い反応をしていてはすぐに襲われてしまいますよ?今日は初日ですしこの辺にしておきましょう。くれぐれも、旦那様や他の誰にも言ってはいけませんよ」
「もちろん…わかってるわ」
「それじゃあ、このことは僕と名前様2人だけの秘密です」

微笑んで小指を差し出すとお嬢様も小指を出して絡めてくる。こうしてこの日から誰にも言えない仮の恋人生活が始まった。

・・・

「お嬢様、最近テストの成績があまりよろしくないようですね」
「だって…学校の先生の授業わかりにくいんだもの」
「お嬢様が通われている学校は全国から優秀な教師をかき集めた名門校なんですよ?」
「そんなこと言ったって…」
「今日はしっかり復習しましょうね。頑張ったいい子には、ちゃんとご褒美もあげますから」
「ご褒美…?」
「欲しいですよね?ご褒美」
「が、頑張るわ…!」
「ふふ、その意気です」

僕からのご褒美欲しさに頑張るお嬢様がいじらしい。こんな姿を見ているだけでも幸せな気持ちになるというのに、この後お嬢様に甘いご褒美を与えられるなんて…むしろ僕がご褒美をもらっているようなものなんだがな。


「…うん、よく出来ていますね。さすがですお嬢様」
「ふふ、当然よ。ちょっと本気を出せばこれくらい出来るわ」
「次のテストの結果は期待していますからね」
「任せて。ねぇ、テストで100点が取れたら何かご褒美をくれる…?」
「まだ今日のご褒美もあげていないというのに、お嬢様は欲張りですね」
「だ、だって…!モチベーションは大事でしょう?」
「いいですよ。頑張ったらまたご褒美をあげます」

机に向かって座っているお嬢様をひょいと抱きあげてベッドに寝かせると脚の間に身体を入れてその上に重なる。

「ご褒美がえっちなことだとわかっていて強請るなんて…いけないお嬢様ですね」
「うるさいわよ…降谷……」
「ふふ、失礼しました。貴女に触れるのに…この手袋は邪魔ですね」

お嬢様を見下ろしながら手袋を口に咥えて脱ぐと顔を赤くしながら見つめてくる。そのままジャケットを脱ぎネクタイを緩めてボタンを外すと再びお嬢様の上に重なった。

「…ん…降谷…」

お嬢様の服に手をかけ脱がしていきながら首元に舌を這わせてキスを落としていく。下着姿にされると困り顔で目を潤ませて僕を見つめてくるのがたまらなく可愛い…

「恥ずかしいですか?今から下着も脱がせてしまいますけど」
「恥ずかしいに決まっているでしょう!?だって…男の人に裸を見せるの、初めてなんだから…」
「そんな可愛いことを言ってもダメです。ご褒美を望んだのは、貴女なんですからね…?」
「あっ…や…ダメっ…!」

プチン…と簡単にホックを外しブラを奪い取るとまだ抵抗を見せて手で隠そうとするお嬢様。まったく手のかかるお嬢様だ…

「こらこら…それじゃあ何も出来ないですよ?気持ちよくなりたいんですよね?」
「…だっ…て…」
「ほら…はやく見せてください…」
「あっ…」

胸を隠すお嬢様の手を力ずくでベッドに縫い付けそこに口付ける。初めての刺激を受け今まで見たことのない淫らな女の顔や声をあげるお嬢様に僕の鼓動も早くなる。

「あっ…降谷っ…ダメ…!そんなことしちゃ…っ」
「ダメ…?本当にやめてしまってもいいんですか?僕は世話係なので…ご主人様である名前様に命令されたらやめざるを得ないのですが…」
「…もう…いじわる…」
「どうして欲しいかお嬢様の口から言っていただけますか?」

少し調子に乗りすぎかな、なんて思いながらもお嬢様にえっちなおねだりをさせる。お嬢様はどう反応するかな、と見つめているとぎゅう…と僕の首に抱きついて、「……続き、して…最後まで…降谷と、シたいの…」なんて言ってくるもんだから僕としたことが危うく理性を崩壊してしまいそうになった。

「男の煽り方は、教えなくても十分お上手のようですね…。では、仰せのままに」

お嬢様の胸を両手で揉みながら乳輪ごと口に含んで優しく舐めあげる。たくさん唾液をつけてぴちゃぴちゃと音を立てながら両方の乳首を交互に味わうと恥ずかしがって抑えていたお嬢様のいやらしい声もだんだん大きくなっていく。

「…あぁっ……んっ…あっ…はぁ…」
「可愛い声ですね…いいですよ、そのままもっと素直になってください」

胸を責めながら片方の手をパンツの中へ入れると処女とは思えないくらいびっしょり濡れていて思わず口角があがる。

「いやっ…降谷…っ…そんなとこ…!」
「お嬢様、もしかして自分で触ったりしていますか?初めてとは思えないくらい濡れてしまっていますけど」
「そ、そんなわけないでしょう…!変なこと言わないで…っ」
「ふふ、失礼しました。それではこれは、僕に可愛がられて悦んでいるのだと素直に受け取ることにします」

パンツを脱がせてヌルヌルになった割れ目を指で撫でると名前様は脚をモジモジさせて気持ちよさそうにしている。

「お嬢様…指、入れますよ。少し痛いかもしれませんが、この後お嬢様がもっと痛くならないためですので…」
「んっ……ん…痛っ…」
「大丈夫…ゆっくり慣らしますから、力を抜いてください」
「そんな…無理よっ…」
「ほら、僕に抱きついて…僕のことだけ考えて…?」
「んん…んっ…」

最初は初めての刺激に戸惑い脚をガチガチに硬らせていたお嬢様も少しすると慣れてきたようで苦しげだった声が甘いものへと変わってくる。

「…あっ…ん…降谷…そこ…」
「ここですか…?」
「ああっ…んっ…そう…!」
「もう好きなところを見つけるなんてさすがですお嬢様…それに僕の指を2本も飲み込んで…さっきからこんなに締めつけて…」
「ん…だって…」
「ん?だって…?」
「降谷にされるの…気持ちいいから…っ」
「素直に言えて偉いです。いい子にはご褒美をあげないとですね…」
「あっ…あっ…んん…そんな、かき混ぜちゃっ…」

ゆっくりナカを撫でていた指をぐぢゅぐぢゅ音を立てて激しく動かすと名前様の表情に余裕がなくなる。こんな乱れた姿を見せつけられてしまっては、僕ももう…

「ほら…我慢しないでもっと…素直に気持ちよくなっていいんですよ…っ」
「降谷っ…もうダメっ…おかしくなっちゃう…っ」
「可愛い…おかしくなってるとこ見せてください…僕だけに…」
「あぁっ…あぁあ…んっ…んん…あっ…!」
「……気持ちよく、なれました…?」
「ん…はぁ…はぁ…」
「でも、本番はこれからですよ…」

カチャカチャとベルトを外し、ズボンとパンツも脱ぐと大きくなった自身をお嬢様の秘部へあててこすりつける。

「ほら、触ってみてください。今からコレでもっと気持ちよくしてあげますからね?」
「えっ…あっ…そんな…」

お嬢様の手を取って僕のに触らせると指とは比べ物にならない大きさに照れと不安の表情を見せる。

「ん…こんなに大きいの…入らない…っ」
「大丈夫…僕を信じて…ほら、さっきみたいにぎゅってして…?」
「んっ……降谷…」
「何ですか、お嬢様」
「お願い…優しくして…?」

そんなに可愛い顔で可愛いことをお願いされて、逆に理性を壊されそうなんだが…!と思ったが…どうにか持ち堪えた。

「もちろん、甘く優しく愛してさしあげますよ…お嬢様にまた、可愛くご褒美をおねだりされたいですから」
「降谷…」

硬くなった自身をぐぐっ…とナカに少し進めるとお嬢様は「痛いっ…」と悲鳴をあげて僕の背中に爪をたてた。お嬢様のそんな反応にさえ興奮してしまう僕は最低かもしれない…なんて思いながら優しく声をかけて少しずつ入り口を広げて奥へ奥へと進んでいく。

「んっ…はぁ…痛かったら、思い切り爪をたてていいですから…」
「んっ……も、無理よ…降谷…っ」
「あと少しで…全部、入りますから…頑張ってください…」

頭を撫でて優しく微笑むとお嬢様は頷いて僕の肩に顔を埋めた。


「……ふう…お嬢様…全部入りましたよ」
「…ん…ほんと…?」
「ほら、わかります?ここに、僕のが全部入って一つになってます」

お嬢様の下腹部を撫でながらそう言うと、お嬢様は照れながらも嬉しそうに微笑んだ。

「もう少し馴染むまで、こうしていましょうか」

ぎゅうっ…とお嬢様を抱きしめて頬にキスをするとお嬢様も僕を優しく抱きしめ返した。あぁ…すごく満たされる。こんな気持ちは、久しぶりだな…

「…そろそろ動くよ?」
「ん…」

もう十分に馴染んだソコはゆるゆると腰を動かすとぐちゅっ…ぐちゅっ…と音を立てて僕の動きを滑らかにしてくれる。卑猥な音とともに今まで我慢してきた分の快感が一気に襲ってきて、僕自身いつまで理性を保っていられるかわからない…

「んっ…はぁ…気持ちいい…?」
「あっ…あぁ…んっ…気持ちいいっ…」
「僕も…すごく気持ちいい…」
「どうしよう…降谷…ドキドキが止まらない…苦しい…」
「これ以上煽ると、痛い目を見ますよ…?人がせっかく…我慢してるっていうのに…っ」
「ああっ…あんっ…はあっ…降谷っ…降谷っ…」
「名前様っ…ん…もっと僕を感じて…僕のことだけ考えて…」
「…あぁあっ…んっ…もう…ダメっ…あっ…あぁっ…」
「まだイっちゃダメですよ…僕のほうはまだまだ愛し足りないですから…っ」

ばちゅっ…ばちゅっ…と激しく腰を打ち付け名前様の身体を揺らしながら想いをぶつけるように夢中で腰を振った。いけないことだとわかっていても止められなかった。それがたとえ期限付きの許されない恋人ごっこだとしても…

「あんっ…ああっ…あぁんっ…降谷、お願いっ…もうダメっ…きちゃうっ…」
「んっ…そんなに締めて…いけない子ですね…じゃあ…一緒にイきますよ…ぁっ…んっ…くっ…!」

ぎゅうっときつく抱きしめて数回激しく奥へ叩きつけると急いで抜いてお嬢様のお腹へと熱い欲を吐き出す。

「はぁ…はぁ…すごい…いっぱい出てる…」
「あまり…見ないでもらえますか…?」

お嬢様のお腹の上に出した精液を拭き取ると裸のままベッドの中に入りお嬢様を腕の中に閉じ込める。

「僕とお嬢様がこんなことをしているなんて旦那様に知られたら、ただでは済まされませんね…」
「ふふ、そうね。でも…後悔していないわ」
「お嬢様…」

僕の腕の中におさまるお嬢様の眼差しに吸い込まれるように互いの顔が近付く。このままお嬢様の唇を奪ってしまいたい…けど…

「ファーストキスは永遠の思い出です。お嬢様の初めてを奪っておいて言いづらいですが…ここはお嬢様が本当に好きになった相手とのために大切にとっておいてください」
「…私は今したいのよ?私の命令でもダメだと言うの?」
「はい」

そう短く返事をすると、お嬢様は納得のいかないような顔を僕の胸に埋めてそのまま眠りについた。




それから数年経ち、お嬢様は大学生になった。あれからたった数年といえど若いときの成長というものは著しいもので毎日顔を合わせている僕から見てもお嬢様は大人っぽく更に美しく成長された。しかしそれに伴い早くも縁談の話が度々舞い込んでくるようになり、お嬢様の悩みの種となっているのだった。

「降谷、少しいいか」
「はい、旦那様」
「近頃名前への縁談の話が増えているのはお前も知っているだろう」
「はい…」
「大学内で好意を寄せてくる者も少なくないと聞く。そこでだ…私があの子にいい相手を見つけてくるまで、お前に名前の仮の婚約者として振る舞ってほしい。まあ、言い方は悪いが…虫除けだ」
「え、婚約者…?私がですか…?そんな…荷が重すぎます」
「しかしこれは名前の提案でな、どうしても相手はお前じゃないと嫌らしい」
「お嬢様が…?」
「あの子はお前を気に入っているし私もお前なら安心して任せられる。なに、そう長く続けることはないさ。じきに私がいい相手を見つけてくる」
「……承知しました」




「んっ…はぁ…なぜあんなお願いをしてしまったんです…言いましたよね、僕達にこうして…身体の関係があることがバレたらおしまいだって」
「あぁっ…ん…」
「ほら、悦んでいる場合ではないでしょう…僕は怒っているんですよ?それなのにこんなにたくさん濡らして…動かすたびにいやらしい音がどんどん大きくなってますけど…本当に反省してるんですか…?」

夜、お嬢様の部屋でお仕置きとばかりにお嬢様を責めたてる。ずちゅっ…ずちゅっ…と卑猥な水音を立ててお嬢様のナカを何度もいじめ続けて。

「やぁっ…降谷っ…」
「嫌って言っても止めません…いけないお嬢様には、世話係の僕がしっかり教えてあげないと…」
「あっ…あんっ…んん…」
「我儘はダメだとあんなに教えたっていうのに…もしかして、僕のことが好きなんですか…?婚約者になってほしいって思うくらいに…僕のこと、好きになっちゃいました…?」
「好きっ…降谷…降谷っ…もっと奥にきて…っ」
「まったく…困ったお嬢様ですね…っ」

パンパンパンパンッと激しく腰を打ち付けてなんだかんだ我儘なお嬢様の要望を叶えてあげる。結局彼女をこんな風に我儘にしたのは僕が甘やかしすぎたのが原因かもしれないな…

「あぁあっ…あっ…あんっ…イっちゃう…っ」
「僕も…そろそろ…んっ…ぁあ…くっ…」


お嬢様の身体の上に吐き出した精液を拭き取り服を着せて自分も身なりを整えていると後ろからぎゅっとお嬢様に抱きしめられる。

「…本当は、わかっているんでしょう。私の気持ち」
「…いけません、お嬢様」
「好きよ…ずっと前から。婚約者になってほしいというのは私の心からの願い。降谷以外の人との未来なんていらない…」

泣きそうになるお嬢様を今度は僕が抱きしめ返す。こんなに誰よりも近くにいるのに結ばれることが許されないなんて…おかしい話だよな。

「そう思うのは今だけです。人の気持ちは変わりますから。…ですが、もしもお嬢様の気持ちが変わらなければ…僕はいつでもここにいますから。お嬢様が誰と結ばれようと、僕の心と身体は…ずっとお嬢様だけのものです」
「降谷…苦しい…」
「我慢してください…」

自分の気持ちを抑え込むようにお嬢様をきつく抱きしめた。今の顔は、お嬢様に見せられるものではないからな…




そして運命の日は思った以上に早く、ある日突然訪れた。

「見合いの相手と日取りが決まったぞ。まあ見合いと言っても形だけで結婚は決まったも同然、当日までに礼儀作法を見直しておきなさい」
「嫌…!お願いパパ、相手は私に選ばせて!」
「今更何を言ってるんだ、そんなことが許されるわけないだろう。諦めろ」
「やだ…やだぁ…」
「降谷、後は頼んだぞ」
「…はい。お嬢様、お部屋へ戻りましょう」

座り込んで子供のように泣きじゃくるお嬢様を支えてお嬢様の部屋へ連れてくる。我儘を言ったり泣いたりする姿は数えきれないくらい見てきたが、ここまで取り乱すのは初めてだった。

「降谷と離れるなんて嫌っ…」
「お嬢様…」
「降谷はどうしてそう落ち着いていられるの?私のことなんて本当はどうでもいいんでしょう?私がいないほうが仕事も楽になるし我儘言われずに済むしパパに怒られなくなるものね…!」
「お嬢様が僕のそばにいてくれるなら、我儘だって聞いてあげたいし旦那様にいくら叱られたって構いません。辛いのは、僕も一緒です…」

ずっと宝物のように大切にしてきた君を、突然現れた見ず知らずの男に渡すなんて嫌に決まっているだろう。甘やかされて育ったお坊ちゃんに名前の我儘を聞く器なんてあるはずないし、第一名前の何を知っていると言うんだ。そんな奴に、僕の命より大切な人を取られるなんて…平気でいられるはずがない。

「降谷…キスして。私の初めては、全部降谷がいい」

自分がずっと想いを寄せていた人が自分を好きでいてくれる。名前の気持ちにはずっと前から気付いていたけど、自分の気持ちを打ち明けたら抑えがきかなくなるとわかっていて伝えられずにいた。だから恋人ごっこだなんて言い訳をして、ずっと近くで他の男を寄せ付けないように名前の気持ちを独り占めしていたんだ。思えばこの数年、複雑ながらも毎日幸せだった。名前に手を焼かされる日々も、こうして2人で過ごす秘密の時間も。僕の全部が名前を中心に回っていた。それはご主人様だからではなく、ただ純粋に愛していたから。

「僕も…君を誰にも渡したくない」

名前の唇に自分の唇を重ねてファーストキスを奪う。ずっと大事に取ってきておいたのに、結局唇までも奪うことになるとはな…。自分の感情を抑えきれないほどに、気付けば彼女への気持ちは大きくなっていたらしい。

「…どう?初めてのキスは…ってすみません。ちょっと調子に乗りすぎましたね…」
「何言ってるの…降谷はまだ私の婚約者でしょ?もっと名前呼んで…ふつうの恋人みたいに話して?キスも1回じゃ足りないわ…」
「…いいよ、全部叶えてあげる。僕のことも名前で呼んで…?」
「零…好き…」
「僕も大好きだよ…名前…」
「…ん……ふ…」
「…ほら、もっと舌絡ませて…」
「んっ……はぁ…ん…」

名前を抱きしめて互いの舌を絡めたキスを何度も何度も繰り返す。必死に僕の舌に合わせてくる愛おしい熱を逃したくなくて、窒息しそうなほど長い間夢中で唇を犯し続けた。


「名前、全てを捨てて僕と来る覚悟はある…?」
「え…?」
「家族や友達にも会えないし、今みたいに裕福な暮らしは出来なくなると思うけど…それでも僕を選ぶというなら、僕の一生をかけて君を幸せにする」
「零…っ」

勢いよく抱きついてくるなり「零がいてくれたらずっと幸せだよ…」と涙を流す名前にまた愛しさが増す。本当にわかっているのかこの子は…一生のことなんだからもう少し悩んでもいいのに。けど…僕のほうこそ、君が共に生きてくれるのならこの先どんな困難にも立ち向かえそうだよ。


「でも…そんなこと、本当に出来るの?」
「大丈夫、僕を信じて」

この数年、ただお嬢様の世話係や恋人ごっこを楽しんでいたわけではない。旦那様の命令や時には苗字家を守るために独自で名前の知らない汚い仕事もたくさんしてきた。おかげで旦那様も知らない繋がりが僕には出来た。まあ簡単ではないが、何とかなるだろう。もちろん、こっちの顔はこの先も名前に見せるつもりはないけどね。