ピンガと年上女医※


俺が所属しているこの真っ黒い組織の中で唯一異色の存在がいる。白い白衣を纏った組織専用の女医、名前。ジンに殺された宮野明美、そして組織から逃げ出し行方をくらませているシェリーの姉だ。その存在を知ったあの方の命令でジンが海外で医者として働いていた彼女を拉致し、薬の研究の続きと医療業務をさせている。

彼女は母親であるエレーナ似の美人で、目の肥えたこの俺でさえも初めて見た瞬間いい女だな…と思った。

そんな見た目とは打って変わって彼女は親しみやすく、「押せば抱けるな…」と今までの経験上そう確信した俺はある日研究室にこもっている名前を口説きにかかった。だが彼女は顔色一つ変えず、「コドモに興味ないわ。性欲ならシゴトで発散してきたら」と軽くあしらってきやがった。

年上とはいえ小馬鹿にしたような態度に腹が立った俺は、薬でも飲ませて無理矢理抱いてやろうか、殴って力ずくで従わせちまうか、などとも考えたがそんなことをしようもんなら上が黙っちゃいない。

溢れる怒りをどうにか押し殺し、(胸ぐら掴んで怒鳴りはした)意地でもこの女を俺に惚れさせてやると自分のプライドに誓った。


シェリーの一件で監視が強化され、ほぼ研究室に閉じ込められている名前に俺は頻繁に差し入れやプレゼントを贈った。別に優しさなんかじゃねえ、すべてはこの女を抱くためだ。そして一度抱いたら捨ててやる。俺にすがってくるこいつの顔を見たとき、あの日の俺の怒りはようやく浄化されることになるからな。

最初は女が好きそうなスイーツや酒を与えても、「いらないわ。何か変なもの入れてそうだもの」とはねつけてきたこいつにまた暴力を振るいたい衝動に駆られた。

「あ?テメェこれいくらしたと思ってんだよ、しかも限定でクソ並んだんだからな」
「別に頼んでないでしょ。それなら自分で食べたらどう?」

と俺に毒味をさせ、何もないことを確認した後「やっぱりいただくわ」などとほざくこの女に腹が立ってしょうがなかったが、美味そうに食べる姿を見るのは悪い気しなくて、気付けばこいつが喜びそうなもんを考える時間が増えていった。


「よぉ、薬出来たか?」
「そんなしょっちゅう聞かれても、すぐ出来るものじゃないの」
「ふん、三流医が」
「次怪我してきても麻酔してあげないわよ」
「おーこわ」

言葉の裏を探る必要なくこんなくだらねえ話を笑ってできる唯一の存在。名前と少しでも話せた日は自分にもまだ人間らしさが残っていたんだと実感して安心する。もっと上にいくためにはこんな感情邪魔でしかねえけど、会うのをやめようとは思わなかった。

「これ、やるよ」
「ふふ。今日は何かしら」

俺もそうだが、名前も最初の頃に比べて俺への警戒心が薄れてきているのが見ていてわかる。俺が余計なことをしなければ他の奴らに接するように優しい名前だったが、なんだかんだで今では組織の中で一番仲がいいんじゃねえかと思っている。さすが俺、だてに長年潜入捜査を任されているだけのことはある。

俺から小さな紙袋を受け取り口角を上げて中身を取り出す様はまるでガキだな。こんなんでよくもこの俺のことをコドモだとか言ってくれたもんだぜ。

もはや懐かしくさえ感じるあの日の出来事を思い出しながら、名前の机に腰を掛けて様子を伺う。

「かわいい…!これ、リップ?」
「ああ、お前には勿体ねえくらい人気のブランドのな」

なんて、自分でもこれが照れ隠しの嫌味だってのは自覚してる。元がいいのに働き詰めのせいか仕事柄なのか最低限のメイクしかしないのが気になって、グレースとして使うコスメを買いに行ったときにこいつに似合いそうなやつもついでに買ってやった。

「またそんなこと言って」
「いいから貸せ。俺が塗ってやるよ」
「別にそれくらい自分で…」
「お前より俺のほうが上手いからな。おらさっさとよこせ」
「あっ…もう…」

自分で贈ったものを無理矢理取り上げると彼女の顔に手を添えた。

「ふっ…そんな口尖らせてたら上手く塗れねーだろ。力抜いてちょっと口開けろ」
「はいはい…」

やっぱり俺の見立て通り。こいつにはベルモットやキャンティみてえな派手な色よりこういう淡い色のが合う。色はつけてねえがリップクリームでちゃんと保湿はしてあんだな…おかげで塗りやすいぜ。

唇ばかりに目を向けていたがふと目線をあげると今までにないほど近い距離で目が合い、一瞬動揺したが俺より先に名前のほうが目を伏せて視線を逸らした。なんだよ、それ…俺のこと意識してんのか…?近すぎだとか、早くしろってまた嫌味のひとつでも言われるかと思ったのに。

「今照れただろ」
「自惚れないで、別に貴方じゃなくてもこの距離で目が合ったら反射的に逸らすでしょ」
「へぇ…その割に唇だけじゃなくてこっちも血色良くなってきたけど?」

そう言って頬を撫で顔を近付ける。今日ならイケるかも…と距離を更に縮めていたとき。

コンコン、とドアをノックするやベルモットが入ってきた。

「あら、お邪魔だったかしら?」

なんてにやりと笑いながら俺に視線を送ってくる。この女、いつからそこにいやがった…ボスのお気に入りかなんか知らねえがいけすかねえババアだぜ。

せっかくのチャンスに水をさされ、イラついた俺はチッと舌打ちをして研究室を後にする。

それにしても…やっぱあいつもああいう顔するんだな…と名前の照れた顔を思い出してはまた早く会いたい気持ちにかられるのだった。


しかしその後、俺は自分が贈ったものに対して後悔することになる。

ある日いつものように研究室のドアを開けると、バーボンと名前が仲良さそうに話していた。それだけでなんか胸の辺りがモヤッとというかイラッとする。

「名前さん、リップの色変えました?」
「ええ、わかる?」
「わかりますよ、よく似合ってます」
「ありがとう」
「もっと近くで見せてください」

そう言って微笑むと名前と距離を縮めるバーボンに思わず「おいっ」と声が出てしまった。

「あれ、いたんですかピンガ」
「いたわ。人前でいちゃつきやがって胸糞悪りぃ」
「それは失礼しました。名前さんがあまりに綺麗だったのでつい」
「ふふ…バーボンったら冗談が上手いのね」
「僕は本当のことしか言いませんよ」
「〜〜〜!」

あー!!!なんでこんなにも無性に腹が立つんだ。バーボンの野郎…名前が好みのタイプなのかなんなのか知らねーがあの調子で隙あらば話しかけやがって人たらしが。無駄に容姿がいいところも気にくわねぇ。


そしてまた別の日。

「薬の研究はどうなってる」
「そんなに急かされても困るわ、元々こういうのは専門じゃないの」
「知るか。無駄に色気づきやがって…そんな暇があるなら研究に集中しろ」
「別にこれくらいいいじゃない」
「テメェまさか組織の誰かに惚れたんじゃねーだろうな?」
「あら、やきもち?貴方にもそういう感情があるのね、ジン」
「あ…?今すぐその生意気な口黙らされてえか」

ジンにまでキスを迫られる名前を助けるべく偶然を装って研究室に入ると、ベルモットに邪魔されたときの俺のようにジンは舌打ちをして名前から離れた。

「お楽しみ中だったか?悪いなジン」
「お前こそ、潜入捜査のほうはどうした。金魚の糞みてえにこいつに纏わりついて邪魔してんのが耳に入ってるぜ」
「あ?誰が金魚の糞だこら」
「任務に集中しろ。失敗したら殺す」

そう吐き捨てて出て行くジンに殺意が増す。やっぱ嫌いだぜあいつ…テメェこそベルモットやシェリーとなんかあったって噂出回ってるっつーのに自分のことは棚に上げやがって。

ジンとバーボンが特に名前を気に入っているのは知っていた。あいつらみてーのがいるからこっちは気が気じゃ…て、何考えてんだ俺は。これじゃあまるで、俺があいつに惚れてるみてえじゃねーか…。



「本当にいいの?」
「たまには息抜きも必要だろ。俺が一緒ならそのままどっか消える心配もねーしな」
「今更行くところなんてないわ。でも、ちょっと嬉しい」

にっこりと微笑む口元は、俺がやったリップの色が光っていてこっちまで口角があがりそうになる。あの日から馬鹿の一つ覚えみてーに見るたびにつけているところを見ると、きっと毎日つけてくれているのだろう。まあ、好き勝手に出歩けねーし元々こういうのに無頓着なだけなんだろうけど。

「ほら、乗れよ」

まさかこいつを自分の車に乗せる日がくるなんてな、と思いながら助手席のドアを開けると「ありがとう。ピンガって意外と紳士よね」とかまた調子の狂うようなことを言うもんだから「意外じゃねーだろ、一言余計なんだよ」と言い返してドアを閉めた。

「どっか行きたいとこあるか」
「そうね…海が見たいかな。水族館とかもいいし…」
「お前嫌がらせかよ。こっちは潜入で見飽きてるってのに…」
「ピンガが普段どんな風に過ごしてるのか少し興味あるもの」
「はぁ…?なんだよその理由…」

仲がいいと自負はしていたがやっぱりこいつ俺のこと好きなのか…?俺の潜入先のことなんて誰も気に留めてねーっつーのに、ほんと変な女…。


「本当にそんなんでいいのか?もっとこう…服買ったり、高い店で飯食ったりとかしたくねーの?」

なんだかんだ江ノ島方面に車を走らせながらそう聞くと、「ええ、オシャレしたらまたジンに浮ついてるって怒られそうだし」と困ったように笑って答えた。

「あいつの名前出すんじゃねえよ」

せっかく俺が外に連れ出してやってんのにジンのことを思い出されたのがむかつく。あいつの意見なんてどうでもいいだろうが。

そんなイラつきを隠しもしない俺に、名前は「そうね、ごめんなさい。もう言わないから怒らないで?」とハンドルを握っていない方の手を握って微笑んだ。

「最初からそうしてろ…」

ああ…調子狂う。なんでいちいちこれくらいのことで心乱されてんだ俺は。こっちから仕掛けるときはそうでもねーのに、不意打ちでこういうことされると事故りそうになるから勘弁してほしいわ。


車を駐車場に停め、海沿いを歩きながら水族館に向かう。何も言わずに名前の手を握ると、少し驚いた後俺の言葉を待つように見つめてくる。

「逃げられたら困るからな」
「随分信用ないのね、私」

そう言いつつもまんざらでもなさそうに握り返して隣を歩く名前。俺が言うのもなんだが、これじゃあまるで…

「デートみたい」

今まさに俺が思っていたことを口にされて一気に顔が熱くなった。それを悟られないように、「俺とデートできるとか光栄に思えよ」と反対側を向きながら言うと「こっちの台詞ね」と名前は笑った。はたから見りゃ、俺らもその辺のカップルとなんら変わりねーんだろうな。こんなとこ、死んでも組織の奴らには見られたくねーけど。つーか見られたら困る。


水族館に着くと休日とあってかなかなか混んでいた。カップルやら家族連れやらで鬱陶しいったらねえぜ…。

「ピンガ、あっちの大きい水槽のところに行きましょう」

早くも人の多さにうんざりしている俺の手を名前は楽しそうにぐいぐい引っ張っていく。その辺のガキと変わんねーな…なんて思いながら「わかったから引っ張んな」と半ば保護者気分でついていくと、名前は水槽の前で目を輝かせて中を見つめている。

「魚なんか見て楽しいか?」
「ええ、楽しいわ。普段こういう環境で働いているの?」
「観光で行ってんじゃねーんだぞ。俺が見てんのは魚じゃなくて機械だ」
「ふふ、それもそうね」
「…まあでも、クジラの鳴き声とかは聞こえるけどな」
「ええ!すごい…!」
「凄かねーよ。うるせーのなんのって…仕事でトラブってるときとか鳴かれると殺したくなるわ」
「あはは、ピンガらしい」
「お前でもそう思うと思うぜ」
「私もベルモットに変装してもらって潜入しようかしら」
「やめとけ、スキルの無さですぐバレる」
「そこは貴方がフォローしてよ」
「嫌なこった」
「ケチな男ね…あ!あっちのクラゲのほうも行きましょ!」

やれやれ、と言われるがままについていくと今度はライトアップされたクラゲと写真を撮りたいらしい。仕方ねぇ…付き合ってやるか。

「撮ってやるからそこ立ってろ」

スマホを片手に水槽から離れようとすると、「何言ってるの、貴方も一緒に写るのよ」と腕を掴まれ引き戻された。マジかよ…。

「うーん…自撮りってなかなか難しいわね」
「お前の腕が短けーんだろ、貸せ」
「余計なお世話よ」
「いいから、もっと寄れ」

名前のスマホを取り上げて腕を伸ばし、もう片方の手で名前の肩を引き寄せるとボタンを押した。

「おー、なかなかいい感じじゃん」
「見せて?」
「ん、ほら…」

スマホを覗き込みながら嬉しそうにしている顔を見るとまた胸の辺りがざわついて変な気持ちになる。なんだよこれ、うざってぇ…。

「ねぇピンガ、カワウソと触れ合えるみたいよ…!」
「あ?そうかよ…」
「もう、ノリ悪いわね。ほら見て、すごいかわいい」
「動物とか興味ねーんだよ」
「見てみて!握手…!」

小さい穴から出すカワウソの手を握ってめちゃめちゃ嬉しそうにこっちを見てくる名前。可愛いのはどっちだよ…と思いながら写真を撮ってやった。俺と手繋いだときもこんくらい嬉しそうにしてたらもっと可愛いんだけどな。


イルカのショーの時間になり、せっかくだからという彼女の意見を尊重して前のほうに座る。まあ、俺からしたらクジラもイルカも似たようなもんだがたまにはこういうのも悪くねぇか。

こいつらも人間と同じ、生きるために芸覚えてエサ貰って精一杯生きてんだな…とか思いながら見てる俺の横で名前はしきりに拍手をしたり相変わらず目を輝かせている。

こんな組織に捕まらなけりゃ、こいつみたいないい女はきっと普通に恋愛してこんなデートも日常的にして結婚してたんだろうな。俺みたいな人殺しの手なんか握って嬉しいわけねぇか。

気付くとそんなことを考えていてついぼーっとしていたがそれはイルカ共の大量の水しぶきによって現実へと引き戻された。

「冷てえっ!!クッソ…やっぱ後ろに座っときゃよかったぜ…って…」

隣を見ると当然彼女もずぶ濡れになっていて、白いシャツから下着の色がくっきりと浮き出ている。色どころかデザインまでわかっちまうくらいに…

「あっ…」

俺の視線で気付いた名前は顔を赤くして腕で隠すと恥ずかしそうに俯いた。そういう初心な反応されるとこっちも照れんだろうが…。

ったくいちいち世話が焼けるぜ…と彼女に自分が着ていたジャケットを渡すも、「濡れてるからいらない」と返された。この女…!



「あー、ったくとんだ災難だったぜ」
「ふふ、よく似合ってるわよ」
「殺すぞテメェ…」

結局そのままでは乾きそうもないということでグッズ売り場からTシャツを買って着替えて帰ることに。デカデカとイルカやらカワウソが描かれたTシャツをお揃いで着て帰るとか…恥ずかしすぎんだろ。

「ペアルックね、ピンガ」
「よりによってこんなだせえペアルックとか…最悪だわ」

海岸沿いの堤防の上に座って休憩しながらそんな愚痴をこぼす。マジで組織の奴らにこれだけは見られたくねぇ…。

「忘れられない思い出になったんじゃない?」
「とんだ黒歴史だよ」

頭を抱える俺の横で名前は楽しそうに笑っている。この時間を少しでも引き伸ばせりゃあいいのにな…

「なんだか不思議よね。この海のずっと向こうで何も知らずに生活していたはずなのに、今はこうして貴方といる。お互い、来年の今頃はどこで誰といるんでしょうね」

いつまでも一緒にいられるわけじゃない。来年どころか、いつ何があってもおかしくねえ世界に足を踏み入れちまったんだからな。

こいつにとっては家族を殺された仇でもある組織で強制的に協力させられてんだ、問題なくやってるとはいえ本当はすぐにでも抜け出してえはずだ。

けど、俺は…

「来年も変わらず薬の研究してんだろ。お前ペース遅すぎだし」
「ふふ、そうかも。その内痺れを切らして殺されないといいけど。まあ、どのみち薬が完成してもきっと用済みの私は…」
「………」

自嘲ぎみにそう話す彼女の唇を、気付けば俺は自分の唇で塞いでいた。

「…んなことさせねえよ」
「ピンガ…。…ふふ、どうしたの。私に惚れちゃった?」
「悪いかよ…とっくの昔に惚れてる」

名前の肩を抱き寄せてもう一度唇を重ねる。ふざけたTシャツ着て、好意もバレバレで…すげえ格好悪いけどこの時間が永遠に続けばいいと本気で思った。



「あっ…ちょっとピンガ…!」

ホテルを取り部屋に入るなり名前をベッドに押し倒す。抵抗したって本気で嫌なわけじゃねえだろ…?

「ん?なんだよ」
「もう、戻らないと…時間が…」
「んなもんどうとでも言い訳考えてやるよ」

Tシャツを脱いで名前のも脱がすとさっき濡れた服越しに見えたブラが顔を出す。

「まだ濡れてて気持ちわりーだろ。脱がしてやるよ、下もな」
「あっ…だめっ…!」

力で俺に敵うはずもなく、あっというまに身包みを剥がされた名前を見下ろしながらベルトに手をかけ自分も残りの衣服を脱ぎ捨てた。

身体を手で隠しながら俺を見上げて頬を染める名前。

「ふ…これでもコドモだって思うか?俺から見りゃあんたのほうがよっぽどウブだけどな」
「あの時の貴方はただ性欲にまみれたコドモだったでしょう?それに、私の経験が少ないのは相手を選んでるからよ」
「へぇ…そりゃあ是非選ばれてぇな」

距離を縮め名前の上に重なって頬に手を添える。

「俺のこと、選んでくれるか…?」

至近距離で見つめてそう問うと、名前が優しく微笑み引き寄せ合うように唇が重なった。

身体を隠していた名前の手は俺の頬に添えられ何度か口付けを交わした後互いの舌を絡め合う。

「ん…はぁ…」

生温かった舌がどんどん熱を帯びていく感覚と初めて見る名前の表情に俺自身も興奮する。

俺がやったリップをつけた唇が俺の唇で乱されていくのがまたたまんねぇ…

頬に添えられていた手が俺の首に回されて、本当に受け入れる気でいるんだな…と改めて確信する。

時折目が合い視線を絡ませながらちゅっ…ちゅっ…と音を立ててキスを続ける。

やべぇ…まだキスだけだってのに高まりが止まんねぇ…

長いキスを終えて首筋に唇を這わせると舐めながら胸を揉む。揉みながら指先で乳首を擦ると小さく声が漏れ、もっとそのやらしい声で鳴かせてやりたくなる。

弄っていると徐々に硬くなり勃ち始める乳首をきゅっと摘むと「あっ…」とさっきより少し大きい声が出て思わず口角が上がる。

「気持ちいいか?」
「もう…言わなくてもわかってるくせに…」
「舐めてほしい?」
「意地悪しないで、ピンガ…お願い…」

そう言って恥ずかしそうに視線を逸らすと回した腕に少し力を入れて胸へと誘導する。

「しょうがねぇな…声、我慢すんなよ」

普段涼しい顔ばかり見てきたからか、そんなこいつが俺を求めてくんのがすげー嬉しい。

胸を掴んで乳首を突き出してそこに舌を当てるとビクッと身体が跳ねて快感に悶える名前がやらしくてかわいい。

胸を口に含み唾液をたくさんつけて乳首を何度も舌でいじめたり時折吸ったりすると、我慢しきれない声がどんどん漏れてくる。

「ぁっ……はぁ…ぁんっ……やっ…」

普段白衣の下にこんな敏感でやらしいもん持ってたとはな…

両方の胸を揉んで交互にぢゅぶぢゅぶしゃぶっては指でも刺激を与える。

「あんっ…だめ、ピンガ…っ」
「綺麗な顔に似つかわしくねぇほど乳首でかくなってんぜ…真っ赤に腫らしちまって…やらしいな…」
「んんっ……あぁっ…」

俺に胸好きにされて感じまくって俺の身体に太ももを擦り合わせてくる名前。そろそろ下も可愛がってやるか…

膝を掴んで軽く持ち上げるとソコはもうびしょ濡れになっていて、すでに勃起している俺の下半身も更に熱を増した。

「下、もうすごいことになってるぜ」
「うるさい…」
「全部俺が綺麗にしてやるよ…感謝しな」
「あぁっ…ん…あっ…そんな…だめ…っ」

ヒクヒクしているソコに舌を当ててゆっくり舐め上げると名前は大きく甲高い声で鳴いた。

俺の頭を押さえつつも脚を開いて快感を得ようとしている姿にまた欲情する。えっちな女医か…いいな、たまんねぇ…。絶対ジンやバーボンにはこいつのこんな姿見せたくねぇな…

舌で敏感なところを何度もなぞりつつ音を立てて吸うと頭を押さえる手に力が入る。

そろそろイくか…

逃げられないように脚を腕でホールドすると責め立てるように動きを激しくし何度も吸い上げる。

「あっ…あぁっ…ピンガ…!」

必死に呼ぶ声も無視してお構いなしでぢゅううっぢゅううっと吸うと、

「お願い離して…っ…あっあぁっ…だめっ…!」

と抵抗した後ビクンッと腰を浮かせて達した。


エロすぎんだろ…。正直俺ももう先走りが垂れて今すぐ突っ込みてぇとこだけどたぶんもう少しほぐした方が良さそうだよな…

「イったな…そんなに良かったかよ、俺の舌は」
「バカ…ほんとそういうところがコドモなのよ…」
「んな生意気な口聞いてっと壊しちまうぞ…?」
「あっ…ん…」

キスで口を塞いで舌を入れると指をナカにずぷっ…と入れる。指を出し入れしながら名前を見下ろせば俺の舌を舐めながらシーツを掴んで快感に耐えている。

もう十分に濡れているソコに指を増やし反応を見ながら良いところを何度も撫でてやると、キスしながらも「ぁっ…」と声が漏れ俺に抱きついてくる。

「イきそ…?」

耳元で囁くとコクコクと頷きぎゅうっとしがみついてくるのが愛おしい。

ぐじゅぐじゅと音を立てて指の動きを早め突起も親指で弄ってやる。

「んんっ…ぁっ…あんっ…あぁっ!」

恥じらう余裕もなく喘ぎ2度目の絶頂を迎え涙目で俺を見つめてくる名前。

「悪いが俺ももう限界だ…挿れるぞ」

先走りもダラダラ流れガン勃ちしたちんこを持って名前の上に重なるとビショビショに濡れているソコに当て擦り付ける。

「力抜けよ…?」
「ん…」

キスをしながら少しずつ慣らし、先っぽを挿れるとゆるゆる腰を動かして奥へと沈めていく。

「んっ…!」
「痛いか?」
「少し…」
「セックスすんの久しぶり?」
「…ええ、そうだけど…悪い?」
「いや…んじゃもう少しゆっくりするわ」

ああ…この俺がこんなに女に合わせたセックスするとかどうかしてるぜ。早くガンガン腰を振りたくて仕方ねぇっつーのによぉ…!


「全部入ったぞ…」
「ん…」
「お前…本当に組織の他の奴らに手出されてねぇだろうな?まあ、出されてたらこんな狭くねぇだろうけど…」
「あら、もう彼氏面?」
「茶化してんじゃねぇよ」
「言ったでしょ、相手は選ぶって。そんなに気が多いほうじゃないの」
「それって、つまり…」
「好きよ、ピンガ。今日は私も貴方とこうなることを望んで来たの。女にここまで言わせるもんじゃないわ…」

後頭部に手を添えて引き寄せられ名前からキスをされる。唇を重ねた後視線が絡み、深い口付けと共に彼女を抱きしめて腰を動かす。

「んっ…あっ…ピンガ…」
「俺もお前が好きだ…」
「ん…」

浅いところからどんどん奥の深いところへと突き上げてグリグリと子宮を潰すように俺のを押し付ける。

「あっ…あんっ…あぁっ…」

シーツをぎゅっと掴み快感に耐える姿がまた俺のSっ気を刺激してもっといじめてやりたくなる。

「俺ので奥掻き回されて気持ちいいかよ」
「んっ…あっ…気持ちいい…っ」
「ふっ…随分素直じゃねぇか…ほら、もっとやらしい声で俺を興奮させてみな…」

名前の耳を舐めながらそう囁くと、

「ぁ…んん…あぁっ…ピンガ…奥、だめ…」

と俺にだけ聞こえるように耳元で可愛く喘がれてマジで興奮した。

「ふふ…おっきくなった…」
「うっせ…」
「もっときて…ピンガのことたくさん感じたいから」
「後悔すんなよ…?」

ズチュッズチュッと淫らな音を部屋中に響かせて何度も名前の奥を突き上げて鳴かせた。

快感と好きな女の乱れた姿に自分の限界を感じると名前を力強く抱きしめて最後に何度も激しく奥を犯す。

「あぁあっ…ピンガ…も…だめっ…!」
「あー…俺も…出すぞっ…」

お互いきつく抱きしめ合って名前の一番奥に熱いのをたっぷり注いでやった。

あー…マジで過去一最高のセックスだったな…


「名前…」
「ん…?」
「好きだ」
「ふふ…私も」

熱の冷めやらない俺達はベッドの中でイチャつき幸せな時間を過ごす。あーやべ…また勃ってきた…このまま2回戦といくか…

シーツに包まり抱き合ってキスしまくっていると突然名前の着信が鳴る。

「ん…誰かしら…」
「放っとけよ…」
「組織の誰かからかも」
「あ、おいっ…」

チッ…せっかくいい雰囲気だったのに誰だよ。くだらねえ内容だったらマジで殺す…

「どうしよう…ジンからだわ」
「あ!?」

よりによってアイツかよ…!!クソが…俺に殺意を覚えさせんのが上手いことだけは褒めてやるぜ…

「貸せ!」
「あっ、ちょっと…!」

無理矢理名前のスマホを奪うと画面をタッチして電話に出る。

「なんだよ」
「あ…?テメェこそどういうつもりだ」
「テメェにゃ関係ねぇだろ。こいつに何か用かって聞いてんだよ」
「そうだ、だから早く代われ。テメェに用はねぇ」
「あーもう…貸して!」
「おい!」
「もしもし、ジン?ごめんなさい、薬に必要な資料がもっとないかと思って実家に帰ってたの。そのままピンガを連れ回しちゃって…すぐに戻るわ」
「ほう…随分仲がいいじゃねぇか。で、資料は見つかったのか」
「それが…ごめんなさい」
「余計なことしてんじゃねぇ、さっさと戻れ」
「ええ…それじゃ」

通話を終えると「急いで帰りましょ」とさっきの雰囲気が一瞬にして消えて無くなったかのように服を着始める名前。クソッ…面白くねぇ…

「結局アイツの言いなりかよ」
「貴方が言い訳考えるのヘタクソだからでしょ。ジンが相手だとすぐムキになるんだから」
「ぐっ…」
「…それに、これ以上ジンに睨まれたらこうして会えなくなっちゃうもの」
「………クソッ」

なんで普通の奴らより優れてるこの俺が、そいつらは当たり前にしてること出来ねぇんだよ…

納得はいかねぇが渋々服を着ると、

「帰るまでがデートでしょう?」

なんてこいつが微笑みながら手を繋いでくるもんだからもう何も文句は言うまいと思った。

「あっ…ピンガ…」

繋いだ手を引き寄せて名前を抱きしめる。あー…この体温も匂いもしばらくお預けか。

「明日から俺はまた潜入先だ。何かあったらいつでもすぐ連絡しろよ」
「うん…何もなくても連絡する」

どちらともなく重なる唇に愛しさを感じつつ、名前の手を引いて足早に部屋を後にした…。


・・・


数日後、パシフィック・ブイ

「グレース、お疲れ様。良かったら一緒にコーヒー飲まない?」
「気がきくわね直美、お言葉に甘えていただくわ」
「あ、それ人気ブランドの新作アクセサリーよね?グレースに似合いそう!」
「こーら、人のスマホを覗かない。それにこれは自分用じゃないの」
「あ、もしかしてプレゼント?」
「そう。私の大切な人だからとびっきり素敵なものをあげたくて」
「喜んでもらえるといいわね」
「ふふ、ありがとう」