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 古の時代。伝承には残っていない、鬼と人間の戦いが長く続いていた歴史がある。
 鬼舞辻無惨という男によって生み出される鬼という異形。その異形の鬼と戦い続けた鬼殺隊という人間の組織。
 死に逝く者の無念と強い意志を受け継いで戦い続けたその先で、鬼舞辻を討つという悲願を達成する。鬼の始祖である鬼舞辻が死んだ。さすれば鬼舞辻の血を引く他の鬼も塵となり消える。安堵し、歓喜し、失った命を尊んで涙したあの日。ようやく、総てが終わった。






 −−ように思えた。


『…まだ終わらせるものか』







「ほほほほんっとーに大丈夫なの!?ねぇ!大丈夫!?」
「大丈夫だって!」
「心霊スポットつったって、ただの噂だろ」


 −−現代。
 都内にありながら既に使われなくなって久しい建物はいくつも存在する。それは時に人の恐怖心を引き立てるスポットとなり、怖いもの知らずの若者たちの好奇心を掻き立てる産物となっていた。

 そして東京郊外にある以前は病院として使用されていた建物もその1つ。
 鬱蒼と生い茂る雑木林の奥に存在するそれは異様な空気感を纏い、ただ静かに建っていた。

 『夜な夜な唸り声が聞こえる』
 『人の泣き叫ぶ悲鳴が聞こえる』
 『肝試しに行った人が帰ってこない』

 ネット上で綴られる情報はありきたりなものばかり。信憑性は薄いが何かが出そうな雰囲気がある。だからこそ手短な非日常というスリルを味わいと集う若者は後を絶たない。

 その日も噂の廃病院に3人の若者が訪れた。
 大学の同級生というどこにでもありそうな関係性の男女3人。懐中電灯を手に薄暗い病院の中を歩き、スマートフォンや使い捨てカメラなどを使い周囲の写真を撮っていく。
 ピチョン、ピチョンと水滴が落ちる音さえも大きく響く