「じゃあ、今日はこれを着て頂戴♪」

私の恋人の【お願い】が、最近あらぬ方向に飛んでいる気がする。
……と思いながら、鳴ちゃんの持っているブツを眺める。
ふわふわと手触りのよさそうなフリル生地のブラ。胸元にはかわいい猫の形をした隙間がある。ショーツは薄い生地で、なんだか防御力がなさそう。そしてオマケに、首輪のような紺色のリボンと鈴。

…………どういうことなの……と鳴ちゃんをじとーっと睨むも、可愛い笑顔でさらりと見なかったことにされた。

「こんなことにお願い使っていいの、鳴ちゃん?」
「大丈夫よ、これを着てアタシの妹になって♪ ってところまでがワンセットだから。結構奮発してるでしょ」
「私がね!」
「あら、そうだったかしらぁ?」

うう……私の方が年上のはずなのに、なんだろう、このもてあそばれてる感……!

とはいえ、これが彼の【お願い】というなら仕方ない。ほにゃらら万円より、恋人の着飾った姿が見たい健気な年下彼氏――と超善意的解釈をすれば、嬉しくないこともない。かも。
閑話休題。
という訳で泣く泣くお着替えしました。

「やだ、かぁわいい♪ ほらほら、こっちにいらっしゃい! 美味しいチョコレートを用意してたのよ」
「チョコは嬉しいけど……こ、このままで食べるの?」
「うふふ。お姉ちゃんが食べさせてあげる」
「え、ええー……」

彼が用意したチョコは、海外でも有名な王家御用達のチョコレート専門店のものだった。相変わらず、鳴ちゃんの選んでくるスイーツは超一流のものばかりだ。

鳴ちゃんの大きな手に腕を引っ張られ、彼の長い脚の間に着席させられる。曲がりなりにも上司たる私専用の部屋にある家具だ。おそらく高級品のソファは、私と鳴ちゃんの重みを受けて柔らかに沈んでいった。

「はい、名前ちゃん。お口開けて」
「な、鳴ちゃん、せめてシャツだけでも着せて……」
「コラ。今はお姉ちゃん、でしょ?」

たしなめるように鳴ちゃんがそう言って、私の口に小さな丸いチョコレートを指で押し込んだ。唇に指先が触れ、ぴくりと肩を揺らしてしまったけれど、すぐに順応し、彼から与えられたものを咀嚼する。

口に含むとトロリと溶けるような食感で、とっても美味しい。下着で食べさせられている奇妙な状況を取り除けば、もっと素直に味わえたものを……。

なんて文句は、はしゃいでいる鳴ちゃんの手前言えなかった。なんだかんだで、こうやって嬉しそうな顔をする彼が好きだから、本気で拒絶も出来ない訳だ。惚れた弱み、なのかな。

「美味しい?」
「うん、おいしい……お姉ちゃん」
「でしょ〜? アタシのお気に入りの店の、一番のおすすめ商品なのよ。さ、お姉ちゃんにも食べさせて?」 

後ろから抱えこまれていたので、少し無理のある態勢で振り返る。彼の方に体を寄せ、私より少し高い位置にある口元へと、薄く平べったいチョコを運んだ。

「ひゃっ!?」

ぱく、と鳴ちゃんが私の指ごと口にくわえた。平たいそれは、鳴ちゃんが私にくれた丸いチョコよりもずっと溶けやすく、鳴ちゃんの咥内で一瞬にして溶けてしまったのが分かった。

「ん、ふ……おいひい」
「鳴ちゃんっ……ゆび、離して……」

チョコはすっかり溶け切ったのに、鳴ちゃんは私の指を解放してくれない。つぅ、と厭らしいタッチで指先をくすぐられると、なんだか下半身のほうから変な感じがした。鳴ちゃんの熱い咥内から零れる吐息と、ちょっと厭らしい音が、私の耳のすぐそばで響く。

「ん〜♪ おいしかったわぁ」

ちゅぽ、とあられもない音を立て、彼は私の指を解放してくれた。上機嫌な鳴ちゃんは可愛かったけど、それ以上に妖艶な感じがした。

顔を赤くしていること、彼にバレたのだろうか。綺麗な薄紫色の瞳がすうっと細められ、するりと指先は私のショーツのクロッチを撫でた。頼りない薄手のショーツは、湿っていることを露骨に示している。

「あら。おもらししちゃったのかしら、アタシの可愛い妹は?」
「な、鳴ちゃん……っ、ひぁ、」

優しく割目を撫でるだけだった指先は、その上にある小さく硬い部分を突然ぐりぐりと押してきた。お仕置き、と言わんばかりの強すぎる快楽に、一瞬目の前が薄らと白くなりそうだった。

「お姉ちゃん、でしょ」
「お、お姉ちゃっ……お姉ちゃんっ、だめ、はうっ!?」

薄いショーツはあっさりとずらされ、そこから鳴ちゃんの長い指がつぷりと音を立てて埋められた。彼は本当に何でもできてしまう人なので、何度も体を重ねた私のことなど、あっさりと見破ってしまう。丸く出っ張った場所を遠慮なく指で突かれると、びくびくと腰が浮いた。

「アタシの妹はえっちだから、こっちも可愛がってあげないとね」

もう片方の手が、胸の方へと触れた。ふにふにと、まるでマシュマロでも掴んでいるような具合で優しく揉んでくる。それでも私は、すでに下の刺激で参ってしまっているので、勝手に胸の頂きはツンと主張し始めてしまう。

「あらあら。摘まんで〜って泣いてるわね」
「ばっ、バカ!」
「そんなこと言っていいのかしら? まぁ、可愛い猫ちゃんを崩したくないし、ブラ外せないんだけどねぇ」
「あっ、あぁっ」

優しい言葉とは裏腹に、ブラ越しに胸の飾りを、鳴ちゃんがきゅっと強めに摘まんだ。ビリビリとした感じが背中に走り、痛い、と叫ぶ予定の口からは、情けない声しか零れなかった。

すっかり体の力が抜けてしまって、ぐったりと彼の方へ全体重をかけてしまう。すると、お尻の方に何か硬いモノが当たった。……なんだ、鳴ちゃんだって興奮してるんじゃないか……と、さっきからエッチだの何だの言われてた身としては、思ってしまう訳で。

こっそりと、鳴ちゃんのズボンの前を触る。びく、とかすかに彼の太ももが震えたのを見て、つい口元が緩んだ。

「お姉ちゃんだって、エッチだね?」
「……んふふ。イタズラ好きねぇ、名前ちゃんは」
「うん。お姉ちゃん……ショーツ脱がせて?」
「……ほんとに、どこで覚えてくるのかしらね、そういうの」

はぁ、と熱いため息が首筋にかかって少しくすぐったい。長い指先が、するりとショーツの紐部分を解く。するとそれは下着の機能を失い、ただの布っ切れへと変わってしまう。

ひらひらとしたそれを、鳴ちゃんは大事そうに畳んで傍にあるテーブルに置いた。そして、今度はその手が私の脇腹を掴み、くるりと向きを変えられる。向かい合う形だ。

「お姉ちゃんのことも、脱がしてくれる?」
「……っ、うん……」

指を、そっと彼のズボンの前へあてた。チャックを下ろし、下着も少しずらす。ぼろんと飛び出た剛直は血管を浮かべ、パンパンに膨らんでいた。思わずごくりと唾をのむ。彼は少し笑って、腰を浮かせてズボンと下着を丁度いい位置まで下げてくれた。

「はい、乗って」
「えっ!?」
「お姉ちゃんのお願い、聞いてくれないの?」
「っうう〜……」

お願いは一個だけだよ! と苦情を言いたいけれど、きゅんきゅんと疼く秘所がそれを拒んだ。彼の首に腕を回して抱き着き、お互いの一番熱い部分を触れ合わせた。そのまま腰を下ろすと、じわじわと肉壁をえぐるような感覚に腰が浮きそうになった。けれど、そうなるより前に、鳴ちゃんの大きな掌が思いっきり私の腰を下ろさせた。

「あぁぁっ!」

自分の重みもあるから、いつもより深い場所に太いそれが突き刺さる。目の前がチカチカする。犬のように情けなく息を繰り返す私を他所に、鳴ちゃんは律動を開始した。

「あっ! あ、あ、まって、ひううっ」
「っく……キツっ……締め付けないでよっ」
「だ、だってぇ……」
「ああ、ほら泣かないの。一緒に腰動かして?」
「う、うん……お姉ちゃんっ……」

すっかり前後不覚になり、鳴ちゃんに抱き着く。言われるがままにゆっくりと腰を上下させると、鳴ちゃんは心地よさそうな息を吐いた。私ののろまな動きにも文句を言わず、優しく何度もキスをしてくれるから、酷く安堵してしまう。

「かわいい、名前ちゃん……っく、ふふ、やだ……もう出ちゃいそうよぉ」
「もう、出して……」
「うふふ。だぁめ。もうちょっと、頑張って?」
「あ、あっ……ふぁああ……」

鳴ちゃんが、ソファの上に寝転ぶような態勢へと誘導してくる。彼の上にうつ伏せになるような態勢になると、彼が再び私の腰を持って、ゆるやかに腰を動かす。じわじわと迫るような刺激は、甘い拷問のようだった。

「ほぉら、がんばって……♪ まだまだ、お姉ちゃんは我慢できるからね?」
「あっ、きもちい……嵐、ちゃん」
「っ! ……も、突然名前で呼ばないで頂戴……」

ちょっとイきそうになったじゃない、なんて彼がぼやいた。