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天使なんかじゃない




 昔、私の愛する人は私を抱きしめて「天使みたいね」と言ってくれた。抱きしめたりじゃれたりつついたり、思いつく限りのスキンシップで私を愛して、求めて、待ち構えてくれた人。天使みたいね、と笑うその人の方が、天使だった。
 いいや、天使だった、じゃない。天使だ。私をこんな遙か遠くまで連れてきてしまった、宇宙を渡る天使。
 今では本当に信仰する人も少なくなって、すっかりファッションモチーフになってしまった天使じゃなくて、宇宙の天使として描かれる、渦と光の象徴の、あかるい天使。あの人はそんな存在だ。現在進行形で。
 だから、私の天使、ってお祈りしてた。■■■■、私の天使。
 祈りが、届いたのかなと思わされる時がある。祈りが、ほどけて星の間に消えたんだ、と思う時もある。
 今、ここに天使はいなくて、私はひとりで、超光速で流れ行く星を移す窓に、映し出された顔を見つめ返している。あの人が天使みたいと言った顔は、なんだか虚ろで、力なくて、途方に暮れてる。憂鬱な赤い瞳。あの人の瞳は、透き通った深い蒼だったのを思い出してしまう、私の瞳。
 私が本当に天使で、古い宗教で語られたように祈りを聞き届ける力があるなら、あの人を抱きとめたい。じゃれつかせてあげたい。つついたり、頬ずりしたりして、私の中で渦巻くいっぱいの愛を残らず差し出したい。
 でも、私の天使は、宇宙の天使は、眠っている。目覚めない。ここにはいない。
 だから、私は決めたの。今度は私が、本当の天使になって、あの人を優しく起こすんだって。目覚めた一番最初に、最高の祝福が出来る存在になってみせるんだって。

(だからそれまでは、少しだけ、さよならだよ。シェリルさん)



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