結局行きつくのは、あの日の出来事だった。
よほど強く感じていたのだろう。
夢を見た。
その日のことを。
私が彼に強い言葉を使ってしまった、意地を張って突き放した日のことを。
まるでもう一度同じことを繰り返しているかのような光景。
目の前には私の膝に乗せられたお弁当。
聞こえるのは、背後の池に流れ入る水の音。
隣に感じる人の気配。
私の心に深く刻まれた、あの昼休みだ。
私の意識とは関係なく、あの日と同じ行動をする私。
こうしようと思わなくても無心にお弁当を食べ進めている。
同じ目線ながら第三者のような心持ち。
籠ったような音ではあるけれど、私と風間さんが聞き覚えのある会話を始めた。
(違う…わたしは…)
会話が始まってすぐ、心臓がバクバクと鳴るような感覚に支配される。
それだけ強く思うのに、夢の中の私は全く同じセリフを吐き出した。
『ばーかっ!』
はっと息を呑む感覚の後、景色がすぐに変わった。
日が傾き、オレンジ色に染まり始めた校内。
何やら声が聞こえ振り返ると、あの日と同じように風間さんが立っていた。
第三者の私の意志に反し、彼に背を向けずんずんと歩き出す夢の中の私。
(違う…)
目をぎゅっと閉じるようにして、目の前の光景から逃げ出したい衝動に駆られた。
私はこんな風にしたかったんじゃない。私は…!
(違う!!!)
がばっと勢いよく上半身を起こし、目を覚ました。
息は少し乱れ、全身がうっすらと汗ばんでいるような気がする。
夢の中でさえ<これは夢だ>とわかっていたのに、あの光景は夢だったのか、また同じことを繰り返してしまったのか、すぐに判断ができなかった。
でも、夢で見たとしても、これは現実だ。
私の意志で口にし、行動した結果だ。
目を逸らすことはできない。
逃げることはできない。
私がするべきことは…。
顔を洗い朝食を済ませ、家を出るころにはさすがに夢の感覚は薄れていた。
それでもはっきりと覚えていることがある。
それは夢の最後の風間さんの一言。
そして、私が風間さんとの時間を、楽しいと思っていたこと。
また会いたいと、話がしたいと、そう願っていること。
いつかの虚栄、離れた幸福
『素直じゃないね』
あの時の風間さんの、本当にさりげない一言は、今の私に一番刺さる言葉だった。